粘る74歳、サンダース「熱狂的選挙」の舞台裏 ロスで12時間密着取材して分かったこと
子供とのツーショットは一番絵になるため、CNNやFOXなどのTVカメラがサンダースの周りに殺到。さらに携帯でセルフィー写真を撮ろうとする一般人らが追っかけ、シークレットサービスがブロックするという阿鼻叫喚が繰り広げられた。
「頼むよ、バーニー!カリフォルニアを何とかしてくれ」という声が住民から飛び、手を挙げて歓声に応えると、サンダースは再び黒塗りの車に乗り込んだ。ヒスパニック系住民とのタウンホールミーティング会場に着くと、数百人のメキシコ系や中南米系の移民たちが待ち構えていた。
34年前エルサルバドルから移民してきたオルベリオ・メヒア(51)は「違法移民を大量に強制送還したオバマには失望している。中米からの移民の多くは、暴力から逃げて政治的にも追われて、仕方なく米国に逃げて来ているのに」。
「違法移民を強制送還して、家族を引き裂くようなことはしない」と語るサンダースを支持する彼は「クリントンも移民法改正を訴えているけど、彼女はイラク戦争に賛成票を投じた過去があるから、他国と戦争したり、シリアを爆撃するのに抵抗がない。それでは敵を作り続けるだけだ」と語る。
言論の自由はどこへ?ボランティアの発言を禁止
サンダースのトランプ批判はこのタウンホールで最高潮に達した。「私の父はポーランドからこの国に移民してきたし、英語も全く話せなかった。人種差別を広め、メキシコ人を侮辱し、イスラム教徒を侮辱するようなトランプとは断固戦う覚悟だ」。
会場でボランティアとして働いていたエレナ・ガルシアもオバマ政権に失望したひとりだという。「オバマは闘う意欲も意思もなくした。過去40年以上、貧しい労働者のために闘ってきたサンダースなら、実績がある分、今後もずっと闘うと信じられる」。
彼女はそれだけ言うと「これ以上話すとまずいから」と言った。理由を聞くと、サンダース陣営のスタッフから、ボランティアはマスコミにコメントしないように、とお達しがでているという。
「言論の自由は憲法で定められている権利なのに、おかしいと思うけど」と彼女は付け加えた。「ボランティアはメディアに何も話すな」という箝口令。これは4年前のオバマの再選時の選挙運動でも全く同じだった。ボランティア個人のコメントを取ろうとすると「個人の意見を言うことは禁じられているから」という答えが返ってくるのだ。
一方、共和党の選挙キャンペーンを取材していて、ボランティアが発言を制限され、発言NGだったことは、今まで一度もなかった。最もリベラルで左寄りとされるサンダース陣営が、こんな箝口令を敷くという所が、選挙というものの理想と現実の乖離を物語る。
サンダースがもし大統領になれば、サンダースのスタッフはそのままホワイトハウスで働くことになる。権力を得るためのレンガ積みはもう始まっているのだ。
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