粘る74歳、サンダース「熱狂的選挙」の舞台裏 ロスで12時間密着取材して分かったこと
サンダースは、予備戦によって獲得できる代議員数だけでは、民主党の候補指名は決まらず、民主党の権力エスタブリッシュメント層で構成されるスーパー代議員らの投票結果が、7月の党大会で出るまで、勝敗はわからない、と強調した。
「一部では『バーニーは今撤退すべきだ』と言われているが、全米最大の州、ここカリフォルニアで人々が自分の選びたい候補者に投票する権利が当然あるはず。私は撤退しない」と語り、ドナルド・トランプを破れるのは、前国務長官のクリントンではなく、若者に支持される自分だと語った。
ここまでは、何となく聞き慣れた“バーニー節”だった。モハメド・アリの死についてどう思うか、と記者に問われると「実は自分はちょっとだけボクシング・ファンなんだが、アリがベトナム戦争に反対したことを理由に、選手として絶頂だった頃の3年半をボクシング界と試合から閉め出されていたのを知っている。その勇気を賞賛する」と語った。
アリとサンダースは74歳と同い年。アリがベトナム戦争への徴兵を拒否した頃、学生だったサンダースも反戦運動をしていた。つまり、イラク戦争に賛成票を投じたクリントンを暗に批判しているとも取れる発言だ。
また、アリが熱心なイスラム教信者だったことを挙げ、イスラム教徒への偏見と生涯闘ってきたことに触れ、イスラム教徒締め出し発言をしたトランプへのカウンターパンチも繰り出した。
「民主党で指名候補になれなかったら、独立候補として闘うのか?民主党に不満があるなら、なぜ民主党に属したのか?」という質問には、民主党のオバマ大統領とは、TPPなどに関してお互いの意見は違うが、若い支持者やワーキングクラスの有権者の支持を得たオバマ政府に共感していることを述べた。
質問は国内プレスを優先
その後、フランスのTV局の記者が質問しようとすると「国内のプレスが優先だから」とパス。CNN記者が挙手すると「うーん、CNNかあ」とこれもパスしようとしたが、結局答えた。
海外プレスの質問に答える時間はない、というのは、サンダースに限らない。米国の政治家が選挙で勝つには、米国人有権者に英語で直接メッセージが届いてなんぼだ。特に2年ごとに選挙で勝たなければならない米国議会下院で最初の十数年の政治キャリアを築いてきたサンダースにとって、国内有権者は絶対優先すべき存在。また、そうでなければ、米国議会で「社会主義者」と異名を取るサンダースが過去30年間もサバイバルできなかったはずだ。
また、CNNは最近、トランプの発言ばかりを流している、と国民から批判されることが増えており、サンダースが1万人規模の民衆を集める講演をしても、CNNが報道に割く時間はごくわずかだと知れ渡っているため「うーん」という彼のリアクションを理解する記者も多く、笑いが起こった。
「とにかく、トランプが大統領になるようなことがあったら、この国の破滅だ。それだけは阻止する」と締めくくり、サンダースはハリウッドのサンダース選挙事務所を激励訪問するため退席した。
このあと、著者は衝撃の事実を知る。なんとサンダースを追っかけるプレス用バスがあるというのだ。
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