粘る74歳、サンダース「熱狂的選挙」の舞台裏 ロスで12時間密着取材して分かったこと
「セネター(上院議員)の行く先を取材したいメディアには、今日はプレス用バスの用意があります。本日のセネターのスケジュールは過密なので、このバスに乗らないと各場所の取材時間に間に合いません」
サンダース陣営のマネージャーのひとりが言う。それならばとバスに乗り込むことにした。ホテルの外に出ると、黒塗りのキャデラックのSUVが数台と、ロサンゼルス郡警察のオートバイ軍団、さらにマシンガンを抱え、防弾チョッキを着込んだ黒づくめのロサンゼルス市警部隊、そして総勢20名ほどのシークレットサービスの面々がいた。
「プレス班の乗るバスも、セネターのモーターケイドの一部になり、行動は常にシークレット・サービスの指示に従ってもらいます」とマネージャー。そしてこう付け加えた。
トイレ休憩も食事休憩も皆無
「セネターは人間離れしており、トイレ休憩も、食事休憩も皆無です。滞在先でトイレを見つけたら、行ける時に必ず行くこと。スピーチの最後の『6月7日には~』という言葉が聞こえてきたら、30秒で荷物をまとめ、バスに戻ってください。それに間に合わない人は、置いてきぼりです」。
朝食を食べていなかったので、お腹が空いてきた。目の前にはスターバックスがある。私たちが乗るミニバスの引率担当である、バーニー陣営のスタッフのジョーに「ちょっとサンドイッチ買ってきてもいいですか?」と尋ねると「いや、いつセネターがホテルから出てきて車に乗り込むかわからないので、それはリスキーです。やめた方がいいです」との答えだった。
同じバンに乗る通信社のカメラマンは「あ、iPhoneチャージャーを車に置いてきた」と言う。私を含め、多くのジャーナリストが自分の車で運転してきており、これから1日中、このバスで行動を共にするとは思っていなかったのだった。紙袋いっぱいの食料と飲み物を用意してきた記者は、常にサンダース陣営と旅していたため、その必要性を最初からわかっていたのだ。
ミニバスの中で、「まるでバーニーチームに誘拐された感じだね」というジョークが飛び交うと、いきなり、シークレットサービスのひとりが「行くぞ!」とバンの扉を外から閉めた。
先頭を行く黒塗りのSUVをマシンガン軍団が乗ったSUVが追う。SUVの後ろのハッチバックの窓は開けたままになっており、マシンガンを構える警官が、後ろに面して座り、後方を警護。その周りをハイウェイパトロールのオートバイ警官が護衛する。私たちのミニバンはその後ろに続き、その後ろにさらにTV局の記者らが乗る大型バンが連なる。
通りの車の通行を、複数のオートバイ警官がブロックしているため、一行は赤信号でも一切止まらずに進む。「すごいな…」。誰ともなく、そうつぶやいた。単に上院議員というだけではこんな厳重な警護はつかない。大統領選の民主党代表候補者だからだ。
沿道で「バーニー!」と手を振る人々。全ての車のガラスにはスモークが貼られ、どの車にサンダースが乗っているかわからないので、私たちが乗っているバンにも人々が歓声を浴びせる。ダウンタウンからハリウッドまでは渋滞していれば、1時間かかることもざらだが、赤信号でもかまわず進むため、20分で到着してしまった。
これが権力というものか、とふと思った。LAの渋滞をすり抜けてどこにでも自由自在に行けるこのパワーを一度味わってしまったら、病みつきになりそうだ。
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