粘る74歳、サンダース「熱狂的選挙」の舞台裏 ロスで12時間密着取材して分かったこと

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テレビカメラがサンダースと中南米の民族衣装を着た女性たちのショットを捉えると、いつしかもう出発時間が迫っていた。今日のイベントのトリは、LAコロシアムでの野外コンサートだ。会場に向かうのかと思いきや、途中のパシフィック大通りのヒスパニック系の商店街で、サンダースはいきなり車から降りて歩き出した。

子供達の掛け声は巧みに演出されていた

ウェディングドレスの店や、プロムパーティーのドレスを売る店の前で、次々に通行人に挨拶するサンダース。

プレス班は、何度も同じシークレットサービスに突き飛ばされながら、必死で「メキシコ移民とサンダース」という構図の写真を撮ろうと群がる。さきほどの公園では気づかなかったが、よく見てみると、サンダース陣営スタッフの女性が、先を歩き「こんにちは!」と通行人に挨拶して、「ね、ハロー・バーニー!って言おうか」と子供達に声をかけて誘導していた。

なるほど、子供との絵になるショットはこうして準備されるのか、とやっと気づいた。携帯ショップのTMobileの従業員らとサンダースが店の前で撮った記念写真は、数秒後にはTMobileのアカウントのツイッターで世界中に拡散された。

シークレットサービスに突き飛ばされながらもその写真を正面から撮影したLAタイムズのカメラマン女性は言う。「1日一緒にいてもプレス班の顔も全く覚えないで常に突き飛ばしてくるシークレットサービスって一体何なの?」――確かに。

それが仕事ではあるのだろうが、一切話さず、水も一滴も飲まず、トイレにも行かないように見えるシークレットサービスの人々は、使命をひたすら実行するロボットのようだ。

コンサート会場に向かう頃には夕焼けが空に広がっていた。私たちのミニバンの引率係のジョーは、バーモント州の大学の学生で、サンダースの事務所でインターンをしたことがきっかけで、正式にスタッフに採用されたという。

スーツ姿で髪もきちんと七三に分けて、フォーマルな装いだが、まだ大学生だったのか。さらに、ミニバンの運転手は、元米軍の兵士で、今はゾンビ映画を製作するプロダクションで働いているという。

「実は、バーニーがスキッドロウで降りて歩くんじゃないかと冷や冷やしてたんだ」と運転手氏は言う。スキッドロウとは、全米でも最も有名なホームレスのたまり場で、LAの貧困・ホームレス問題の一番象徴的な場所なのだ。

確かに貧困やホームレスの問題を常にスピーチで問うサンダースなら、スキッドロウを歩いて人々と握手するのはアリだ。むしろ、それをしない方が、不思議でもある。コンサート会場に移動する前に、この過密スケジュールの中、どこから手に入れたのか、ジョーからピザの箱が回ってきた。今日最初の食料だ。

グルテン不耐症のLAタイムズのカメラマンも、空腹に耐えかねて、ピザをぱくついていた。

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