米国企業の「寡占」はデジタル化の産物だ

巨大企業も自然淘汰からは逃れられない

企業が利益を投資に回したがらない点に関しては、多くの理由が存在する。第1に2008年の金融危機以降、マクロレベルでの経済成長が停滞しているため、投資の伸びが低くなっている。ただ、テクノロジー分野、さらに最近まではエネルギー分野などの投資は、需要増が予測されていたため大幅に伸びた。また、自国での需要増を待つ間、複数の米国企業は市場規模や成長の見込みに魅力を感じて、海外に投資してきた。

第2に、集計上の問題が投資額を不透明にしている可能性がある。特にICT(情報通信技術)装置やソフトの価格は品質の向上にもかかわらず、1980年以降に急低下している。つまり、公式統計が示唆するよりも、品質面の調整を織り込んだ投資規模はかなり大きい可能性がある。

第3に、高度にデジタル化した企業の存在感が、10年前に比べ米国内でずっと大きくなっている点が挙げられる。こうした企業はその性質上、工場などをほとんど必要としない。物理的な投資に注目すると、こうした企業が知的財産などの無形資産から利益を生み出す能力を見落とすことになる。また、研究開発や知的財産への投資も見過ごされる。実際には、アイデア重視型企業にけん引され、研究開発投資は史上最高に達している。

また、アイデア重視分野におけるトップ企業の多くは、巨額なM&A(企業の合併・買収)を通じて、成長を遂げている。

米国企業のデジタル化はまだ初期段階

そうなると市場の寡占・独占が価格決定力をもたらし、消費者が不利益を被るとの見方もある。しかし、実際にはそうした傾向は乏しい。デジタル技術の進化によって、消費者は無数の無料サービスの利便性を享受できるからだ。

むしろ懸念されるのは、少数の巨大企業により個人情報が寡占されることである。巨大企業だけが顧客の個人データを集積・管理できれば、他企業にとって参入障壁は高くなり、自由競争が制限されてしまう。

もちろんIT業界のプラットフォームでは、多くの小企業も世界中のユーザーとつながり、自由に競争する土壌もできている。

 このような変遷があるものの、米国企業のデジタル化はまだ、初期段階に過ぎない。最近の調査では、米国経済はデジタルの潜在的可能性を18%実現しただけだとされている。変革が続くにつれ企業世界はさらにダーウィン的発想を持つかもしれない。現在のデジタル巨大企業とて、新たなものに追い落とされて、10年後には存在しない可能性があるのも事実なのだ。

週刊東洋経済6月11日号
 

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