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いま世界的に、新たな幼児教育のモデルが構築されようとしている。根底にあるのは脳科学の発達だ。最近の研究では、脳の発達には生後の数年間が極めて重要であることが明らかになっている。特に生後3年間は、毎秒700~1000個もの新たな神経が生まれる。その重要な時期に子供が耳にする言葉の数は、その後の知的能力に大きな影響を与える。
その点で家庭環境の差は大きい。専門職に就く両親がいる家庭と、労働者階級の家庭とでは、耳にする単語の数に隔たりがある。米国ではその差は年間300万にも及ぶといわれる。また高所得の世帯が子供1人当たり平均12冊の本を所有しているのに対し、最低所得の世帯の子供向け保育所では、その半数以上が1冊も本を置いていないという。
「リターン」は魅力的
ただし、子供が家庭で学ぶことは、教育全体の一部にすぎない。当然ながら学校における教育も重要だ。
ある調査では、OECD(経済協力開発機構)加盟国では軒並み、1年間以上保育園や幼稚園に通園した子供は、そうでない子供に比べて学習到達度調査でより高得点を記録したという。幼児期の学習成果は、その後の人生のキャリア形成をも左右する。幼児教育を受けることで、大人になってからの賃金が1.3~3.5%増えるという長期研究の結果も出ているのだ。
早期から通学すれば、両親の就労機会も促進される。それらを考慮すれば、早期教育への投資が長期にわたって経済的メリットをもたらすことは想像に難くない。ノーベル賞受賞者の経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授によれば、早期教育への投資は、その他のステージでの教育投資と比較しても魅力的なリターンを伴うという。