米国が導入狙う金融取引税は万能薬ではない

大統領選で過大評価されている面も

米ニューヨークにある世界最大の金融街 (写真: mizoula / PIXTA)

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今秋の米国大統領選挙がどんな結果になろうと、おそらく実現に向かうと思われる法案の一つが、金融取引税(FTT)導入である。税体系をシンプルかつ透明性が高い仕組みにし、抜本的な税制改革を行わなくても当座をしのげるようにする対策だ。その考え方は否定しないが、極左の支持者が夢見るほどの万能薬とは言い切れない。

米国社会が高齢化を迎えて国内の貧富の差が拡大する中、国債金利が次第に上昇を続けて税金も引き上げざるを得ず、当初は富裕層を対象にするものの、やがては中流層にも負担を求めることになる。魔法の杖などどこにもないのに、政治的に聞こえの良い「ロビンフッド税」を金融取引に課す考えは、どうやらひどく過大評価されているようだ。

FTTはすでに多くの先進国で導入されている。英国は何世紀にもわたり株式売買に印紙税を課してきたし、米国も同様の制度を1914〜64年に実施した。欧州連合もより広範な金融取引税の導入論議を続けている。

大統領選でサンダース氏が主張

米大統領選でヒラリー・クリントン氏と民主党指名を争ったバーニー・サンダース氏は、金融派生商品までを含む広範な金融取引税の導入を主張し支持層を広げた。

クリントン氏はこれまで課税対象者を絞った案を描き、共和党候補のドナルド・トランプ氏はこの論点に対しまだ一貫した立場を示していない。しかし時が経つにつれ、両者の案もサンダース氏の案に近づくとみられる。

金融取引税の考え方は、30年代のケインズにさかのぼり、70年代にイェール大学のトービン教授によって広く知られることになった。トービン教授によると、金融取引税を導入すれば金融市場は落ち着きを取り戻し、経済のファンダメンタルズにもプラスの作用をもたらすとされた。

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