先進国の民間投資回復には何が必要なのか

株主偏重では利益増えても展望は持てない

先進国の民間投資は弱含みのままだ。米ミシガン州の自動車工場で(写真: ロイター/Rebecca Cook)

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米国はじめ先進国の民間投資が弱含みしている。IMF(国際通貨基金)の調べによると、2014年の民間投資はリーマンショック前のトレンドを平均で25%下回った。危機後の回復は勢いを欠いたままだ。

民間投資の減退は、個人の住宅から企業の機械設備、工場などの建築物まで広範囲にわたる。昨今では原油価格の下落を受け、エネルギー業界の民間投資が急減している。

興味深いのは、米国では民間投資の減退が、利益や内部留保の回復と同時に起こっていることだ。企業は利益をいくら稼ぎ、内部留保をいくら貯めても、将来的な需要や生産の伸びが見通せないと投資に動かない。IMFによると、この投資の「アクセラレーター」理論で、リーマンショック後の先進国の民間投資の弱さはおおかた説明がつくという。

堅調なのは通信など一部だけ

従来であれば、総需要が低迷しても、積極的な公共投資が民間企業投資を後押ししてきた。しかし今や公共投資もまたリーマンショック前の水準を下回るほどに縮小しており、民間投資を逆に悪化させている。今や投資が堅調なのは、ケーブルや通信、デジタルプラットフォーム、SNS、エネルギーなど一部の業界にすぎない。

実際にここ3年間は、通信とケーブル会社が、企業の資本支出で最大のシェアを占めた。次いで大きなシェアを占めたのは、エネルギー生産と鉱業の分野だった。

イノベーション機会の格差もまた、企業投資構成の変化と一致している。2009〜15年に米国では企業の設備投資が減速したが、研究開発、ソフトウエアなど知的財産分野では、逆に加速した。

通常、研究開発投資は循環的な景気回復期に、国内総生産(GDP)に先立って増加する。実際に研究開発投資が経済全体に占める比率は過去最高のレベルにあり、これは今後の生産性向上にとって良い前兆だ。

アクセラレーター理論が示すように、研究開発投資の多くは、現在および将来の予想需要が堅調に推移している技術集約型部門で生じている。また、資本利益の分布も徐々にこれら部門に偏ってきているようだ。マッキンゼー・グローバル・インスティチュートの最近の報告によると、最先端デジタル部門の利益率は、伝統的な部門と比べて大幅に高い。

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