民間投資の減退にはほかの要因もある。先日、米投資顧問会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、主要な欧州企業のCEOに宛てた手紙の中で、多くのグローバル企業が配当や自社株買いを優先し、投資を犠牲にしていることについて懸念を示したという。
確かに米国の非金融企業では近年、投資に回せる資金を配当や自社株買いに使う傾向が強まっている。これは長期的な投資を犠牲にしてでも、短期的な利益獲得の機会を設けるよう、株主が企業に圧力を強めたことの結果でもある。最近マッキンゼーがトップ管理職や企業幹部1000人を対象に行った調査によると、実に79%が、2年以内に堅調な財務リターンを示すよう、株主から圧力がかかっていると回答した。
株主からの圧力だけではない。企業がトップの報酬を四半期利益や年間の株価実績など、短期的な尺度に連動させていることも、投資判断の「短期主義」化を助長している。
長期的価値の創出に向けて
これに対し、株式など投資資産の保有期間が長くなるほど税率が下がる変動制のキャピタルゲイン税を導入すれば、投資家にとって短期主義のインセンティブは薄まるだろう。ヒラリー・クリントン氏などがこうしたアプローチを提案している。
また、フィンク氏はCEO宛てに出した手紙で、長期的価値の創出を記した年次「戦略枠組み」の発行を企業側に呼びかけたという。同氏によると、企業はこうした枠組みにより、短期実績だけでなく長期的な価値重視を株主に働きかける必要が生じる。
重要なのは、そこでイノベーションや需要の伸びを見通せるかどうかだ。民間投資の伸びは本来、そこに懸かっているはずである。
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