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「美食」で自立するスペインの地方都市に学べ 小さな地域であっても「稼ぐ仕組み」は作れる

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  • 木下 斉 まちづくりビジネス事業家
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同市には人口一人あたりとしては世界一のミシュランの星付きレストラン、旧市街地においしいピンチョスがあるバルが多数存在し、食べ歩きができます。これらはメニューを競い合うオープンソース型の仕組みを通じて、食のレベルアップがつねに図られています。

出される料理はフランス、日本などの既存料理から技術やスタイルを導入するだけでなく、物理学などからの影響を受けた調理法まで取り入れ、料理分野で学位がとれる大学まで設立されています。

同市は観光客数ではなく、観光消費額に直結する「食」を軸にしたのが画期的です。歴史観光は大抵一度見れば終わりですが、食事は最低一日三回。おいしいピンチョスがそろうバルの食べ歩きをすれば、一日に数軒の店を回ることになる。つまりは、一日に何度も観光客の財布を開かせることができるわけです。観光消費額うなぎ登りです。

「食」を軸にサービス業と一次産業が連動

同時に、それらの店の数が半端ないため、到底一日では回りきれない。市内のめぼしい店を回るにしても、数日滞在せざるを得ません。日帰りや一泊ではなく、数日にわたって観光客の財布を開かせ続ける「稼ぐ仕組み」が作られているわけです。

さらに、目の前に広がるビスケー湾からの魚介類、背後に広がる広大な土地からは牛などの畜産物。食を支えるさまざまな原材料は基本的に地元で調達されることで、地元飲食業がこれらの一次産業の発展にも寄与しています。

以上のような3点からも、美食を軸とした観光というのは、地元産業としても極めて合理的な選択です。

このような「食」を軸にして、国際的な観光都市競争力を築きあげたのは、1990年後半からというのも驚きです。同市は1800年代から自ら料理をして飲み楽しむ「美食倶楽部」という地域文化を含めて食文化の蓄積を行ってきましたが、それを産業にはできていなかった。

しかし、自ら独立して地域で稼ぐときに過去の蓄積に目を向け、磨きあげ、サービス産業に転換したからこそ「美食のまち」は成立したとも言えるでしょう。

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(左)旧市街地には沢山のバルが集積。(右)市街地から離れた立地の三ツ星レストランも人気

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【人口1.6万人、オンダリビアの場合】

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