――新卒時点で大卒か高卒かで硬直的にコースが決まるということを、変えていく必要がある。
本来、報酬や昇進は、その人の能力や履歴によって判断されるべき。その評価だって、労働市場に入ってから、いくらでもリカバリーできるようにしないといけないはずです。
2011年8月に、ニューヨーク・タイムズでデューク大学の研究者、キャシー・デビッドソン氏の研究が発表されたのですが、そこには「米国で2011年度に入学した小学生の65%は、大学を卒業する時、今は存在していない職に就く」と書かれていました。
つまり20年くらいで産業構造が変わり、今までなかった仕事が生まれてくる。われわれは20年後にどうやって稼いでいけばいいかわからない、という状況に身を置かなければならない。そこで、重要になるには「学び直し」。つまり生涯教育です。
――いつでも「学び直し」ができる環境であれば、求職活動をするときに、高卒か大卒かは、そこまで意味をなさなくなるかもしれないですね。
アメリカにはコミュニティカレッジとかがあって、社会人になった後も勉強している。私も留学してたときに、大人も学校に行って勉強している光景を見て、新鮮な感覚を抱きました。日本では、「勉強は若いときにするもの」ということで、いったん社会に出たらそれを食い潰して残りの人生を送るかたちになってしまっている。今の日本の生涯学習率は、世界的に見ても絶望的に低い。
企業に福祉を押しつけることは、もう限界
正社員としてだと、週5で働くしか選択肢がない。4日働いて、1日学校に行くとか、なかなか難しいわけですよね。硬直的な働き方しかできないから、全年代における学びというもののアクセスが閉ざされている。そのことが、結局、「大卒」というシグナリング効果を有効たらしめているのではないかと思います。
――しかし、その正社員の立場を得ることで、初めて安定した社会保障を得ることができて、将来が見通せるようになるというのが現実。
そもそも、日本では、企業が福祉を担う面があることを前提に設計されてきました。しかし、この「日本型福祉」とも言える特殊な枠組みは、今後も崩壊し続けます。早い段階で、企業が福祉を手放さざるをえないという現実を受け入れる必要がある。
本来、福祉は社会全体で支えるものであって、国民に対しては政府がセーフティネットをきちんと張るべきです。そして、企業はグローバル競争に勝ち残ることに集中するかたちに転換しないといけない。そうしないと、世界の中で日本企業の競争力が相対的に落ちていくことは、避けられません。
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