「努力するにもカネがいる」理不尽な日本 「21世紀の不平等」白熱教室in慶応大学
世界中で広がりを見せる格差問題。アメリカ大統領選挙から保育所・待機児童問題まで、最近話題のニュースの裏側には、ほとんど格差の問題が絡んでいると言っても過言ではないだろう。
そうした中、注目を集めている経済書がある。それが『21世紀の不平等』(東洋経済新報社)だ。昨年末に刊行以降、じわじわと専門家やビジネスパーソン、学生の間で支持され、議論を呼んでいる。
著者のアンソニー・B・アトキンソンは元オックスフォード大学ナフィールドカレッジ学長で、現在は同大フェロー。所得と財産の分配の歴史トレンド研究という新しい分野を切り開いた所得分配論の第一人者である。しかも、あの『21世紀の資本論』を著したフランスの経済学者トマ・ピケティの師であると言えば、納得する人も多いだろう。
今回、この『21世紀の不平等』をもとに格差について議論をしようと集まったのが、慶應義塾大学経済学部の井手英策ゼミの皆さんだ。日頃、財政社会学について勉強している学生たちが、アトキンソンの『21世紀の不平等』をきっかけに日本の格差問題について話し合った。進行役は『週刊東洋経済』の中島順一郎記者が務めた。
蔓延するブラックバイト
まず中島記者が学生たちに投げかけたのは、「格差があることは問題か?」というものだ。経済学部の学生だけに格差問題があることは知っているものの、首都圏出身の高収入世帯出身の学生が多いためか、
「大学に入って、掃除をしてくれる人に高齢者が多く驚いた」
「中学、高校は東京の私立出身。大学に来て初めて地方から来た人に触れ合った。奨学金を受給して大学に通っているという話を聞いて驚いた」
というように、学内の身近なところに話題が終始しがちだった。
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