「努力するにもカネがいる」理不尽な日本 「21世紀の不平等」白熱教室in慶応大学
慶大生に格差問題を問うことには、無理があったかと思われた。だが、中島記者が「ブラックバイトの経験はある?」という質問をした途端、学生たちの口から次々に具体的なエピソードが飛び出してきた。ブラックバイトとは学生が低賃金で過酷な労働を強いられるアルバイトのことだ。学業に支障を来しているケースもあり、大きな問題になっている。
「塾の講師をやったら、ブラックバイトだった。のちに新聞に記事が出たことがある」
「あるコンビニでは、目標の売上げに満たないとバイトにも商品を買わせるようなところがある。それでも生活が苦しくバイトを切れないので、単位を落とす人もいた」
「コンビニのバイトでは入って3日目で、夜勤11時間勤務。ひとりですべての業務をしなければならなかった」
実は、知らず知らずのうちに、富裕な家庭の学生たちであっても、バイト経験を通して、社会に存在する格差問題の一端に日常的に触れていたのだ。
格差はすさまじい勢いで社会に広がりつつある。最近では、「6人に1人が貧困状態」「生活保護受給世帯は過去最多」といったようなデータが世に出てくるようになった。
とはいえ、「服装などの外見からはホームレスに見えないが、住む家がなく、ネットカフェで長期間寝泊まりしているフリーターなどもいる。今の日本は貧困や格差があるという実態が見えにくくなっており、そのために世間から理解されにくい面もある」と中島記者は指摘する。
努力するにもカネがいる
学生たちにとって一番関心があるのが就職だ。むろん慶大生なら就職に困る人は少ないだろうが、それでも希望の会社に入れるかどうかとなると、話は少し違ってくるようだ。
「正規雇用されるまで、大学に残る人もいる。妥協はしない。就職浪人はできるが、それは実家が裕福でなければできない」
「大企業で年収がいい会社に就職することに、強迫観念めいたものを感じている」
無理もないだろう。慶大には幼いころから、恵まれた環境で育った子息が少なくない。充分な教育を受け、いい大学に入ったら、いい会社に入る。それは、ひとつの共通観念でもある。ただ一方で、そうした境遇に対し、ときに違和感を覚える学生も多い。
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