――大学教育のクオリティが低いままで、給付型奨学金に予算を投入するのはいかがなものか、という意見も根強い。
今だと、すべての文系大学で「マクロ経済A」を教えているけど、中には教え方がすごく下手な人もいるのが現実ですよね。僕の大学では竹中平蔵先生が担当されていたので、それなりにわかりやすかったけど、違う学部だと教授が黄ばんだノートを見ながらぶつぶつ教壇で独り言を言っていたり……。そういう人は極端な話、研究だけしてもらえればいいと思います。
教えることに長けている先生の講義をビデオで撮って、インターネットで見られるようにすれば、それを基にディスカッションだけ大学でやるという形だってありえるかもしれない。そうすれば、教えるのが上手くない先生の人件費は減らせると思うんですよね。
――これまでの「大学」の形に縛られる必要はない、と。
これからの教育現場では、学びを促進することがうまい、ファシリテーター的な人が求められてくる。教壇で独り言をつぶやいているような教授の人件費を削減できれば、日本の大学が家計に与える負担は下げられるし、日本の少子化問題にもポジティブです。
少子化問題の元凶なのではないか
大学の問題は、学費の関係で貧困層にアクセスが閉じられているだけではありません。中間層にとっても、「子供をたくさん産もう」というインセンティブを減らす大きな要因になっている。そういう意味で、高い大学費用は少子化問題についても、とても罪深い存在なんですよね。
――それでも、「大卒」のシグナルがなければ、人生の選択肢は大きく変わってしまうという指摘もあります。
高卒者が非正規になる割合が高くて、貧困に陥りやすい可能性が高いのは事実。「大卒」というシグナリング効果はまだまだ大きくて、相対的に貧困から脱する可能性が高くなるから、その道を残したほうがいいというのが給付型奨学金の話なのですが……。本質的には商業高校とか工業高校の改革をしないと、ダメなんですよね。
ヨーロッパでは、高校が職業訓練校としての意味もあって、社会で通用する技能が学べるから、高卒でもなんらビハインドがない。日本でも、そうした技能に応じて給料も上がるなら、高卒であっても問題ないのですが、今の段階では、商業高校は偏差値の低い子が行くところ、みたいな状況になってしまっている。真のプロフェッショナル教育が行われていないという状況も問題です。
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