角中、大化けの秘密―月収13万から首位打者へ 素直な心で、実のある努力

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渡辺の話を聞いて、角中が首位打者までたどり着いた要因を何となく理解できた。

角中の原点をたどると、昔から「実のある努力」をできていたという。そう話してくれたのは、高知ファイティングドッグスでコーチとして指導した森山一人(現・徳島インディゴソックス)だ。角中はロッテに入る前、日本航空第二高校を卒業してからの1年間を四国アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグplus)、いわゆる独立リーグで過ごした。

ここに、彼の原点がある。

角中の持ち味は、スイングスピードの速さだ。リーグ入団を懸けたトライアウトでは3打数0安打に終わったものの、1打席目のレフトライナー、2打席目に高々と打ち上げたキャッチャーフライを見て、森山は「前に飛んでいれば……」と感じた。「すごく高いフライだったから、バットを振ることはできる」と潜在能力を見抜き、チームの社長に獲得を進言した。角中は強靭な肉体を持っており、鍛えれば伸びると感じたのだ。

「素直にやってみよう」と思える性格

一方、当時の角中はスイング中、上半身がブレる悪癖を抱えていた。これを直さないかぎり、ステップアップは難しい。そう感じた森山は、角中に打撃フォーム改造を提案した。「今までと違うことをするから、試合では結果が出ないと思う」とデメリットを伝えると、角中は「やります」とうなずいた。目の前の成績を捨てる代わりに、長期的な視点で先に進もうと決意したのだ。

足を上げて反動を使ってスイングしていた角中は、ノーステップぎみの打法に変えた。足を上げないことで上半身のブレを抑えられ、下半身と連動させて打つことのできるメリットがこの打法にはある。パワーのない打者には難しいフォームだが、角中には適していると森山は考えた。

同時に森山は、近鉄時代に同期だった中村紀洋(現DeNA)からもらった35インチの長く、重いバットを使わせた。ちなみに、角中が現在使用しているバットよりも1.5インチ(3.8cm)長い。

森山はその目的について、「バットを振れなくさせようとした」という。

「もっと考えて振れということです。振れなくなることで試行錯誤し、体の使い方をわかってほしかった。いろいろなフォームで重いバットを振っている姿を見て、多少何かを感じて取り組んでいるのかなと思っていました。角中は『素直にやってみよう』と思える性格を持っている。試合中もそうやって行動していました」

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