角中、大化けの秘密―月収13万から首位打者へ 素直な心で、実のある努力

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素直な心は、一流選手に求められる条件の1つだ。

その第一段階は、人の意見にまずは耳を傾けてみる。ここまでは多くの選手ができることだが、次に必要なのは、自分に合わないと思ったら指導者に意見をぶつけることだ。それもまた素直な心である。

森山はさまざまなアドバイスを角中に送り、彼は「やってみます」とまずは取り組んだ。自分に合わないものがあると、「いろいろやってみたんですけど、よくわからなかったので、明日からこっちにしていいですか?」と直接、あるいはメールで打ち明けてきた。そんな角中は、森山にとって付き合いやすい選手だった。

「角中は『意味がわかりません』と言ってきてくれるので、『じゃあ、こっちにしよう』と一緒に方法を探していける。そういう考え方をできる子です。こっちがアドバイスした方法を少しだけやってやめてしまうような選手には、腹立たしく感じることもあるじゃないですか。角中には、1回は絶対に行動する素直さがあります。だから、こっちも納得できる」

角中の12年シーズンの活躍を見て、森山は「あそこまでになるとは思っていなかった」という。では、なぜ角中は独立リーグからプロの頂点に立てたのか。

角中は運を持っていた

森山によると、独立リーグの他選手と比べて角中の練習量が特に目立っていたわけではないという。少なかった、というわけではない。独立リーグでは、プロに進めた選手もそうでなかった選手も、皆が懸命に努力しているというのだ。

そんな中、角中は運を持っていた。森山が言う。

「角中がアイランドリーグに来たとき、うちが左バッターで、体が強くて『潰れないだろう』という選手を探していました。『18歳のような若い子はいらない』という時期だったら、うちに入団することもなかったかもしれない。そういうタイミングが合ったんでしょうね。さらに言えば、独立リーグからプロに行って、いきなりレギュラーになれるわけじゃない。チームに隙間を見つけて、そこに食い込もうと一生懸命になれたんだと思います」

初めから運命は決まっていて、実のある努力をすれば、運をつかめる――。ここでも渡辺と森山の言葉は重なる。

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