この姿勢は、12年シーズンを2軍で迎えたときも同じだった。
「開幕1軍を逃した悔しさよりも、2軍で実戦の機会を増やせるプラスが大きかった」
中日新聞のインタビューに対し、角中はこう話している。1軍でベンチを温めるより、2軍でプレーした方が、自身の腕を磨くことができると考えたのだろう。
角中がプロ入り以降、周囲の声に惑わされず、信念を持って練習してきたことを示唆するデータがある。1軍と2軍における、対照的な成績だ。
角中は1年目から1軍で出場機会を与えられたが、プロの壁をなかなか突き破ることができなかった。11年こそ171打席で打率2割6分6厘と台頭の兆しが見られたものの、ロッテには岡田幸文、荻野貴司、清田育宏、伊志嶺翔大ら有望な若手&中堅外野手が数多くおり、角中の姿がとりわけ目立つことはなかった。
一方、2軍では入団1年目から鮮烈な光を放っていた。07年に打率3割3分5厘のハイアベレージを残すと、以降、好成績を記録し続けた。1軍では結果を出せなかったものの、2軍で自身の成長を実感していたからこそ、信念を貫けたのではないだろうか。
実のある努力をすれば、運をつかめる
そしてもう1つ、角中が自らの才能を花開かせた要因がある。それを教えてくれたのは、2人の指導者だ。
1人は、角中と縁のない人物。西武の監督を務める渡辺久信である。前橋工業高校から1983年ドラフト1位でプロ入りした渡辺は、いわゆる天才タイプだ。現役時代は豪速球を武器にチームのエースを張り、監督としても巧みな育成手腕を発揮している。そんな指揮官に一般論として「凡才がトップに登り詰める方法」を尋ねると、興味深い話をしてくれた。
「努力は当然、必要だよね。その中にも実になる努力と、実にならない努力がある。もちろん、運もあるんだけどね。俺の持論として、初めから運命は決まっていて、実のある努力をすれば、運をつかめる」
では、どうすれば、実のある努力をできるようになるのだろうか。
「今の子は小さい頃からパソコンに慣れ親しんでいて、いろんな情報が入ってくるでしょ? その情報を自分で処理していくことが必要だよね。全部詰め込むと、伸びていかないと思う。『違うな』と思うことは捨てる。昔の選手は、今の選手ほどそういうことができなかった。昔は指導者に『こうやれ』と言われて、うまく流せる選手は少なかった。今の選手は、いろいろ処理しながらやっていくことが大事だと思う」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら