「子ども」を言い訳に逃げていませんか? 「一人の生涯養育費は家一軒」と言いますが…

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子に伝えられることは持っていますか?

挑戦の極端な例としては、お釈迦さまは妻と息子を捨てて出家しました。自分は王子だから、出家しても王様である父親が残された家族の面倒を見てくれるだろうという算段があったのかどうかは分かりませんが、とにかく自分の道を極めるために、すべてを捨てて出家したわけです。

そして数年の修行の後、いよいよ悟りを開いて道を極めてブッダとなりました。興味深いことに、やがて息子も父を慕って教えを請い、立派な仏弟子となりました。ブッダの息子が出家という選択をした父の姿から学んだことは、きっとそのまま王になって悔やみ続けている父の姿から学ぶことよりも、ずっと大きかったはずです。

「子どもの教育にはお金がかかる」

確かにそうかもしれません。

でも、そこで思考停止するのではなく、今必要な教育とは何なのか、自分は子どもにどんな人生を歩んでほしいと思っているのか、ちょっと考えてみませんか。
自分は子どもに何を伝えたいのか?そもそも伝えられるような何かを持っているのか?

子育ての大事なところは、アウトソーシングできません。もちろん、家庭の外での経験も大切です。習い事や課外キャンプなどで学ぶこともたくさんあります。しかし、その経験も家庭に持ち帰って親と対話することによって、学びの成果が倍増します。親という字は、「木に立って見る」と書きますね。高い視点から長い目で、子供の歩む道を見守り、自然にナビゲートしていく。

「泥中に あれば花咲く 蓮華かな」

親鸞の教えを表す歌として五木寛之氏が紹介されていました。

教育にお金はかからない、というつもりはありませんが、お金をかければリーダーシップが身に付くという時代でもありません。諸行無常の世の中で、泥中に咲く蓮のように、困難を栄養としてどんなところでも花を咲かせられるような生命力を、親子一緒に養っていきたいものです。

松本 紹圭 光明寺 僧侶

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まつもと しょうけい / syoukei matsumoto

1979年北海道生まれ。本名、圭介。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。蓮花寺佛教研究所研究員。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のウェブサイト『彼岸寺』(higan.net)を設立し、お寺の音楽会『誰そ彼』や、お寺カフェ『神谷町オープンテラス』を運営。

ブルータス「真似のできない仕事術」、Tokyo Source「東京発、未来を面白くするクリエイター、31人」に取り上げられるなど、仏教界のトップランナーとして注目される。2010年、南インドのIndian School of BusinessでMBA取得。現在は東京光明寺(komyo.net)に活動の拠点を置く。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。全国各地で各宗派から意識の高い若手僧侶数十名が「お寺から日本を元気にする」志のもとに集結し、学びを深めている。

著書に『おぼうさん、はじめました。』(ダイヤモンド社)『"こころの静寂"を手に入れる37の方法』(すばる舎)『お坊さん革命』(講談社プラスアルファ新書)『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカヴァー21社)『脱「臆病」入門』(すばる舎)など。
 

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