「英語格差」を乗り越えるための新常識とは? 植えつけられた苦手意識はこう取り除け!

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これには、英語嫌いの生徒たちや学生たちの実態を目の当たりにした経験が根底にある。

東北大震災復興支援の一環として福島県や岩手県を訪れて講演した際、質問を受け付けたところ、驚くほど多くの中学生が、「英語は嫌い。どうやったら好きになれますか?」と聞いてきた。「どうやったら好きになれますか?」と真剣に聞いてくる中学生の質問には、嫌いだけど、勉強しなければならないのは分かっている、でもどうしていいか分からないという、切ない気持ちがこもっていた。この問いに答えなければいけない、と思い続けてきた。

「英語を嫌いにならないで」

鳥飼 玖美子(とりかい くみこ)/東京都に生まれる。上智大学外国語学部卒業。コロンビア大学大学院修士課程修了。サウサンプトン大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。NHK「ニュースで英会話」監修およびテレビ/ラジオ講師。著書に『歴史をかえた誤訳』(新潮文庫)、『危うし! 小学校英語』(文春新書)、『通訳者と戦後日米外交』『戦後史の中の英語と私』『英語教育論争から考える』(以上、みすず書房)、『国際共通語としての英語』(講談社現代新書)などがある(撮影:尾形文繁)

さらに、ある私立大学の国際教養学部での経験がある。設置準備段階から構想を練り開設に関与した新設学部に、英語が苦手な学生が予想外に多く入学してきたのである。国際教養学部なのだから英語が得意な学生が入学してくると思い込んでいたので、英語好きばかりでない実態に少なからず驚いた。その大学は一年で辞めたが、「英語をやりたい」「英語を上手に話せるようになりたい」と思いながら、苦手意識にさいなまれていたり、自信を失っていたりする学生のことが忘れられなかった。

私は、その新設学部での外国語教育カリキュラムを策定したが、日々の英語授業は英語教員に一任していた。私が唯一担当していた講義は全員必修の「コミュニケーション概論」である。その授業では毎回、一年生全員を前に、「コミュニケーションとは何か」を講義し、毎回のテーマに基づきグループに分けてディスカッションをしたりレポートを書いてもらったりした。

進退で悩んでいた時期に、私は何かに押されるようにして『本物の英語力』を書き続けたが、それは私の授業を受けていた学生たち一人ひとりの顔や声を思い出しながら、「英語を嫌いにならないで」「英語は、本当は面白いものだと分かって」「英語は楽しく学ぼうよ」そして「英語格差を飛び越えようよ」と語りかけたメッセージであったといってよい。

本書が読者に広く受け入れられたのは、私のその思いが、学生たちと同じような気持ちでいる人びとに届いたということなのかもしれない。

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