証券業界の勢力図が「激動期」を迎えている オンライン証券による「下克上」の時期迫る

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IPOの引き受け業務は証券会社の醍醐味だ(撮影:今祥雄)

オンライン証券が対面証券の“お株”を奪う状況は、これだけにとどまらない。IPOの引き受け業務でもオンライン証券の存在感が増している。

SBIのIR資料によれば、2015年度のIPO引き受け社数は同社が82件でトップ。野村の46件、大和の45件を大きく引き離している(IPO引き受けの主幹事社数、金額では野村がトップ)。

IPOの引き受け会社になるメリットは、新規発行に関連した業務や投資家への販売によって多額の手数料収入が得られる点だ。また、投資家がその株を売り、別の株を買う際、引き受け証券会社を介するのが一般的で、その際にも手数料が手に入る。発行企業が株式の公募や売り出しをする際、再び引き受け会社に選定されやすいというメリットもある。まさに証券ビジネスの醍醐味といえる業務であり、そこが新興勢力に侵食され始めている。

攻勢をかける銀行系証券会社

強敵はオンライン証券だけではない。ここに来て、銀行系の証券会社が攻勢を強めている。マイナス金利の導入によって銀行本体の事業環境が厳しくなる中、「貯蓄から投資へ」の流れを取り込む構えだ。

「(銀行系証券が)銀行預金から株の購入資金を持ってくるのと、(独立系証券が)まったく新しい資金を取ってくるのでは、ハードルの高さが全然違う」(中堅証券幹部)。フィンテックの発展で銀証連携の動きが加速すれば、さらに逆風が強まることも考えられる。

さらに、金融庁が「フィデューシャリー・デューティー」(受託者責任)を金融業界に強く求めている点も、今後の国内事業に逆風となりかねない。金融モニタリング基本方針では「顧客ニーズに応える経営」として、「手数料や系列関係にとらわれることなく顧客のニーズや利益に真に適う金融商品・サービスが提供されているか」と記されており、かつてのような高い手数料率の設定は難しくなっている。

「野村や大和は総合商社みたいなもの。だが、株式市場を左右するファクターが増えすぎて、これまでと同じやり方では通用しなくなっている。今後は得意分野にピンポイントで力を注がざるをえなくなるだろう」(前出の中堅幹部)

目下の証券業界が直面しているのは、シクリカルな相場変動ではなく、より広範な地殻変動にほかならない。歴史の大きなうねりの中で、どの証券会社が勝ち残るのか。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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