証券業界の勢力図が「激動期」を迎えている オンライン証券による「下克上」の時期迫る
2015年度の株式市場は、出足こそ日経平均株価が15年ぶりに2万円台を回復したものの、8月のチャイナショックを契機に1万6000円台まで急落。その後は一時的に持ち直したが、原油相場の下落などから年明け以降は1万5000円を割り込む水準となり、最終的に1万6000円台で取引を終えた。こうした相場の乱高下が高齢の投資家たちを疲弊させ、対面証券会社の収益を一気に収縮させた。
ファンドラップの伸びも鈍化
それでは、まもなく2カ月が過ぎようとしている2016年度の状況はどうか。「国内の相場環境は大底を脱したが、足元の勢いはまだ弱い」というのが、現状に関する証券業界のコンセンサスだ。
先行きについては「政府の経済対策で夏場には持ち直し、1万8000円台を回復する」との声が聞かれる一方、「それは希望的観測に過ぎない」との意見も少なくない。
地盤の国内市場の環境が冴えない中、野村は赤字が続いてきた海外事業で大規模なリストラを行うと発表。2年後をメドに7億ドルのコスト削減を予定している。2016年度はその一部が効果として現れるほか、2015度に計上したリストラの一時費用160億円がなくなることなどから、連結業績は増益が見込まれる。
ただし、国内事業に関してポジティブな話題は、今秋の上場が予定されているJR九州のグローバル・コーディネーターに選任されたことくらい。前年度にあった郵政3社の新規上場(IPO)やトヨタ自動車のAA種類株発行に比べると、収益面の恩恵は見劣りしてしまう。
大和にしても、2015年度は三井生命株の売却益(約120億円)を計上したほか、日本銀行のマイナス金利政策導入に際して日本国債のトレーディングでスポット的な需要があった。こうした一時的なプラス要素がなくなる今年度は、連続減益となる公算が大きい。
むろん、野村も大和も国内事業に関して、まったくの無策というわけではない。少しでも多くの安定収益源を確保することで、固定費部分をカバーする施策を進めている。その一例がファンドラップ(投資一任運用商品)だ。証券会社が顧客に代わって資産を運用・管理し、その手数料を得るというビジネスモデルである。
両社とも、株式市場の活況を追い風に、ここ数年はラップの契約資産残高を順調に伸ばしてきていた。が、市場環境の悪化が引き金となり、2016年1~3月期は急激に鈍化してしまった。「4~5月も状況は変わっていない」(野村幹部)という。一方、オンライン証券では、楽天とマネックスが今夏にファンドラップへ参入すると発表済み。新規顧客の獲得競争はこれまで以上に激しくなる。
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