高すぎる日本のガス調達価格、対策はある 米国シェール革命と日本《6》

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米国の輸出許可は政治問題、日本政府として積極支援

――米国からのLNG輸入に対して、米国政府の認可は下りるのでしょうか。

米エネルギー省の認可がなければ、輸出はできない。そのためわれわれは米エネルギー省に対し、早期輸出承認を出してもらえるように公式な形でずっと要請を続けている。日本は現在、エネルギー危機の中で非常に厳しい状況に置かれている。米国にとって最大の経済パートナーである日本がしっかりした地位を保っていくためには、より低廉なエネルギー調達が不可欠であり、そうしたことを米国の関係者に訴えている。米国側も事情は理解してくれていると思う。

ただ、米国にとってエネルギーの輸出は政治的イシューであり、エネルギー・セキュリティをどこまで緩めていいのか、どれだけ輸出すべきなのかについて、大統領選も終わってこれからしっかり議論されていくと思われる。今のところオバマ政権のスタンスは定かではないが、4月末の日米首脳会談で野田総理が協力を求めたように、今後の政策決定プロセスにおいて、日本政府としてもさまざまなチャネルを通じて要請を行っていく方針だ。

――期待は十分ですか。

われわれは大いに期待している。これまでも決して全面的にノーとは言われていない。ただ、これは政治問題であり、賛成派も反対派もいる。賛成派は日米関係を重視する人や、天然ガスの開発に従事する人たち。一方で、環境重視の人たちの間では、ガス開発の拡大に反発が強い。石油化学産業など米国内でガスを利用するユーザー産業も、輸出拡大で米国内のガス価格が上昇することへ懸念がある。最終的には政権としての判断となる。

――韓国はサビンパス(ルイジアナ州)のLNGプロジェクトで米国政府から輸出認可を受けましたが、日本と違い米国とFTA(自由貿易協定)を結んでおり、韓国ガス公社(KOGAS)によるバイイングパワーも強い。日本は後回しにされる懸念もありますが。

確かにFTA締結国との間では自由な輸出が認められており、その意味では韓国は有利な立場にある。日本もFTAやTPP(環太平洋経済連携協定)を結ぶべきというのは、もっともな話だ。ただ、これには時間もかかる。現状では、非FTA国の立場でもサビンパスのような輸出承認を得るというのが目指すべき目標だ。

韓国などFTA締結国によって輸出許容分のすべてを取られてしまうかという懸念については、必ずしもそうでもないのではないか。韓国などFTA国の需要分は限定的であるし、各国とも米国のシェールガスだけに輸入の比重をかけることもないだろう。シェールガスには生産量や価格の安定性になお不確実性があるためだ。ただ、世界のLNG需要の3分の1強を占める日本としては、できるだけ早期に輸出認可を受けるべく努力すべきであることに変わりはない。

韓国ガス公社のように、政府系の巨大企業が一本化して受注活動をしているメリットは確かにあるだろう。だからわれわれ日本政府としても、今やっているように世界を飛び回って音頭取りをしていかなくてはならない。米国で日本企業が参画している3つのLNGプロジェクトについても、政府がサポート役として働きかけを行っているところだ。

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