高すぎる日本のガス調達価格、対策はある

米国シェール革命と日本《6》

燃料輸入額の急増を主因として、日本の12年度上半期の貿易収支は過去最大の赤字(2.9兆円)を記録した。年間では6兆円との赤字予想もある。恒常的な黒字を上げてきた日本の貿易構造が大きく変化している。また、電力の安定供給と電力料金の上昇に対する不安で製造業の空洞化懸念が加速しており、輸出をプッシュアップする稼ぎ手が減っていく状況。こうした下方スパイラルが広がっていくことが、エネルギー政策のみならず、経済政策全体を考えていくうえで、われわれの非常に強い懸念としてあり、これを何とかしなければと考えている。

アジアプレミアム是正のための3段構えの対策

――現状を打開するために、政府としての対策は。

3段構えで対応している。その第1が、北米の安いシェールガスを輸入することだ。米国のシェールガス価格(指標銘柄のヘンリー・ハブ)は現状3ドル台(100万英国熱量単位ベース)。液化、輸送コストを6ドルとしても、10ドル程度で輸入できれば、現状(15ドル台)に比べてかなり割安となる。

現在、日本企業は米国内で3つの主要LNGプロジェクトに関与している(表参照)。また、大手商社やINPEX(国際石油開発帝石)などが米国やカナダでシェールガスの上流権益を数カ所保有している。日本政府としては、こうしたプロジェクトを通じた日本へのLNG輸出許可の承認を、米国政府などへ積極的に働きかけているところだ。

第2には、北米だけでなく、豪州やロシア、東アフリカなど世界各地から長期で安定的かつ安い価格でLNGを調達できるようにポートフォリオを組むことだ。日本企業が世界各地で上流開発やLNG基地開発を同時に進めていき、各地で競わせることによってプロジェクトを低廉な価格で立ち上げていくことが重要と考えている。北米のシェールガスは、そうした長期ポートフォリオの一要素との位置づけだ。

モザンビークなど東アフリカでも多大なガスの埋蔵量が確認されており、日本企業も参画し始めている。隣国ロシアでは、日本企業も出資するサハリン2プロジェクトで、プリゴロドノエ(南部の積み出し港)にあるLNG基地から日本への出荷が始まっている。今年9月には日露首脳立ち会いの下、資源エネルギー庁と露ガスプロム社(天然ガス生産量で世界最大の企業)との間でウラジオストクにおける新規LNG基地建設プロジェクトの覚書に署名しており、さらなる拡大を目指している。

そして第3段が、今年9月19日に日本がホスト国となって開催した「LNG産消会議」(生産者・消費者会議)での取り組みである。この会議は、生産国と消費国の双方が将来にわたり望ましい価格のメカニズムと水準について、需給や生産の見通しに基づいてオープンに議論しようというもので、今後も年に1回のペースでやっていく方向。日本としては、JCC連動の固定的な価格体系から脱し、よりマーケットの需給を反映したプライシングにしていく狙いがある。これまでは日本をはじめとしたアジア各国は、その安定的な購買性向も影響して、「アジアプレミアム」と呼ばれる割高な価格でLNGを調達していたとされる。価格メカニズムを見直すことで、これをできるだけ引き下げることができないかと考えている。

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