でも泉谷さんはテレビで見るいつもの態度で、子どもだろうとおばあちゃんだろうと関係ない、「バカヤロー!」という挨拶?でどんどん切り込んでいく。
「いつまでも被災者ヅラするんじゃねえ!頑張れバカヤロー!」
「うるせぇガキ! 歌聞く気がねぇなら帰れ!」
僕らからすればヒヤヒヤものだ。でも、被災地の方はみんな笑う。子どももおばあちゃんも、だ。ほんとにみんなを元気にしていく。そして時間がなくても関係なく、寄ってくる人1人ひとりと握手し、サインする。
小学校の体育館を避難所にしていた小さい子どもが、大事そうに持っていたNintendoDSにサインを求めたときは、「こんなもんに書けねぇよ」とか言いながら、泉谷さんはくちゃくちゃの優しい顔でサインしていた。
南相馬にある、とあるおそば屋さんで、遠慮しながらお店の人たちがサインを求めてきたときのこと。ニコニコした感じのよい若いお母さんが、人見知りそうな小さい女の子を抱っこしてきた。
泉谷さんは色紙にサインをしながら、
「震災で大変だっただろ?大丈夫だったか?」
するとそのお母さんは笑顔のままこう言った。
「この子のお父さん流されちゃいました」
僕を含め、周りの空気が固まった。被災地でこうした場面に出合う事は覚悟していたが、あまりに朗らかな空気の中での出来事で、どう対処したらいいか皆わからなくなったのだ。でも泉谷さんは表情を変えず、
「そうか、大変だったな。お嬢ちゃん、いいオンナになれよ」
その子の名前を聞いて、ハートやニコニコマークを一緒に描き、渡した。
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