村上隆(上)「世界で勝つには、勘・挨拶・執念」 アートの世界で、僕が生き残れている理由
――村上さんは、必要に迫られて若者に厳しくしているわけですね。
別に厳しく接しているつもりもなく、めんどくさがらずに、彼らににじり寄っていっているつもりです。
「何だかんだ言っても、村上さんにも愛がありますよね」と言ってくる人もいますが、それは僕を賞賛しているわけでなくて、実は言い出した本人が気持ちいいだけ。僕の実態をまったく理解していない言説だな、と憤ってしまいます。自由、愛、平等、平和といった重厚な日本語が、軽々しく使われて、本人の自己満足を高めるためだけのキャッチフレーズになっているというのが、現代だと思います。
――しかも、そうした麗しい言葉は誰も批判できません。
『創造力なき日本』に掲載したドワンゴ会長の川上量生さんとの対談で、川上さんが「正論を言うのが今の時代である」と言っています。つまり、正論を言っておけば、社会と接するときのリスクが軽減されるので、そういう選択をしているのでしょう。しかし翻ってみれば、それこそコミュニケーションを遮断しているんだ、ということに気がついてほしいんです。
――村上さんは、「みんな、目を覚ませ」と挑発したいのでしょうか?
そうではありません。今の社会は、中小企業の社長とやる気のある若者が割を食っているので、そういう人たちに、「一緒に頑張りましょう。頑張ることは割を食うように感じる世の中ですが、毎日真面目にハードに仕事を続けることこそ、尊いことです。お天道様は見ていますから!」という気持ちを伝えたかったのです。