財政ファイナンスをやってはいけない 池尾和人慶應義塾大学教授に聞く

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また、借りる方の事業者は金利が下がって喜んでいるかと言えば、そうとばかりはいえない。リスクマネーの不足に拍車がかかっているからだ。金利は金融仲介業における価格であり、価格が下がりすぎて、供給者が苦しくなれば、まともな商品が供給されなくなる。すると、需要する側も困ることになる。

伝統的なマクロ経済学で想定しているのは、金利がひとつしかない世界、それは金融仲介の必要性がない世界だ。金融仲介が存在する現実の世界では、金利が最低でも2種類は存在すると考えなくてはならない。最終的な資金の出し手に支払われる金利水準と借り手が支払う金利水準とがあり、その差が利ザヤだ。

量的緩和により借り手にとっての金利が下がるメリットと、利ザヤが圧縮されることによる金融仲介機能の弱体化というデメリットの両方を考え合わせれば、いまや前者のプラスの効果は微々たるもので、後者のマイナス効果のほうが大きくなっているのではないか。

地道な努力によって日本の財政は再建可能

――企業の余剰資金が財政赤字の補填に回ることによって、日本の潜在成長率が下がっているのではありませんか。

財政赤字を出し続けて、国債の累増が発生する結果、そのこと自体が成長率を下げる効果があるという実証結果が、最近は多く報告されている。ケネス・ロゴフ教授の研究が代表的なものなので、「ロゴフ仮説」と呼ばれているが、「公的債務残高がGDP対比で90%を超えると、顕著に成長率の低下が見られる」と言うものだ。ただし、実証研究であって、メカニズムが理論的に解明されているわけではないので、因果関係が逆である可能性もある。つまり、経済成長率が低下している国だから、財政赤字が積み上がってしまうという可能性もある。

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