トランプ旋風をあおった米テレビ局の「愚」

ジャーナリズムに不可欠な検証責任を放棄

大富豪であるトランブ氏と、ネットに押されて収益低迷に悩む米テレビ局は「持ちつ持たれつ」だったようだ。ニューヨークで撮影  (写真: ロイター/Brendan McDermid)

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従来型の考えからすれば、ドナルド・トランプが台頭した責任の多くは、怒れる米国の有権者が負わねばならない。彼らはトランプが代価を払わずに政治戦略ですべてのルールを破ることを許した。しかし、米国の放送ジャーナリストの責任がもっと大きいのは、まず間違いない。トランプの学校での生徒のような悪口と突飛な政策観を、増幅して伝えたのだから。

共和党候補の指名獲得へと至るトランプ氏の行進のすべての局面で、コメンテーターは時折不承認の舌打ちをしただけで、彼の常軌を逸した無数の言説を繰り返し広めた。また、批評家たちは、あまりにも頻繁に、彼の悪辣な民衆扇動を真剣な分析に値するものとして取り扱った。

ジャーナリズムの責務を果たせず

プロのジャーナリズムの仕事は、事実を確認するとともに、歴史的な背景や公平な分析を提供することだ。しかし、テレビのニュースチャンネルは選挙の年に、この責務を果たせなかった。

その理由を示すのは難しくはない。視聴者の減少と収入の低迷に悩まされてきた既存の放送局にとって、政治広告の増加は利益の増加につながる。インターネットのニュースサイトやソーシャルメディアに押されていた従来型メディアは、トランプの異様な行動を、視聴者を引きつけて純利益を増やすのに有効活用できると、すぐに理解した。

並行して、メディア業界は抜本的な統合を経験してきた。大手企業は米国各地の放送局を吸収し、その過程で、各地域のニュース報道の範囲と質をむしばんできた。

ネットが台頭した現在でも、地元の放送ニュースは大半の米国人の主要な情報源だ。世論調査によると、米国人の約60%がテレビを主要なニュース源だと見なし続けている。また、地元放送とケーブルニュースに対する視聴者の信頼度は、ソーシャルメディアの2倍に達している。

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