デジカメ時代に「チェキ」がなぜ人気? 開発と販促の裏側を探る

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――チェキ・シリーズの販売台数は、ここ数年で右肩上がりに増えてきています。

坂田 08年は40万台、09年は49万台だったのですが、10年に87万台と大きく販売台数を伸ばしました。その後、11年127万台、今年度は160万台の販売を目指しています。地域別の比率でいえば、中国、韓国など東アジア地域で5割程度、日本は1割強くらいとなっています。

渡邊 韓国ではタレントのブログで取り上げられたほか、テレビドラマで使われたこともあって人気に火が付きました。当初の販路はインターネット経由が中心だったのですが、その頃から実店舗での販売も増えてきました。

韓国でチャリティーオークションが増えたことも認知度の向上につながったようです。タレントが自分のチェキにサインをしたものをアルバム形式にして販売して、売り上げを寄付するといったイベントです。チェキだとデジタルと違ってコピーもできない。ファンにとっては世界で一枚の貴重な写真となります。

――日本国内ではどのような販売戦略をとっていますか。

坂田 まず家電量販店やカメラ専門店で新製品を全面的に打ち出した販売をしています。また、この製品は「カワイイ」という際立った特徴があるので、雑貨店や化粧品売り場の近くといった従来のカメラとは違った販売チャネルも重視しています。渋谷のパルコでもチェキの特別企画をやっていて、とても好調な売れ行きです。

フィルムカメラを知らない平成生まれに売る

渡邊 ターゲットの若い女性は平成生まれで、フィルムカメラを知らない世代です。そのため、まずは撮ってすぐその場で写真がプリントされる、チェキというインスタントフィルムカメラがあると認知してもらうことを重視しています。

雑誌やイベントなどを通じてプロモーションをしているのですが、ターゲット層の若い女性はなかなかこれまでの家電量販店やカメラ専門店には行くことが少ない。彼女たちが普段行くヴィレッジヴァンガードなどの雑貨店やロフト、パルコといった店舗での販売にも力を入れています。

――デジカメしか知らない世代は、チェキのようなインスタントフィルムカメラをどう受け止めているのでしょうか?

渡邊 「新しい」ですね(笑)。撮った写真が液晶画面に映るのではなくて、モノとしてプリントされて出てくることに驚きを感じているみたいです。当社のイギリス現地法人の社長が息子にチェキを渡したら、「パパ、撮った写真が出てくるなんてすごいデジカメだね」と言っていたとか。デジタルカメラとかフィルムカメラとかの違いというよりは、まったく新しいカメラととらえられているようです。

坂田 チェキはプリントされた写真を友だちに渡したりしてコミュニケーションが広がります。このようなデジカメはほとんどないですから、これはチェキのオンリーワンの存在価値だと思っています。

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