マザーマシン難攻不落の地、米国へ 森精機・現地工場レポート

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目算どおりの成果を収めるためのカギの一つが、生産技術や生産管理といった部分だ。つまりグローバルな生産体制の中、「何を」「いつ」「どこで」「どれだけ」つくるかをいかにうまく見極めるか。加えて、自動化を進め生産性をどこまで高められるか、である。

北米工場では、今春新棟が稼働した国内主力の伊賀工場と同等あるいはそれ以上の最新鋭設備を導入し、生産効率化を図っている。具体的には、隣接するデジタル・テクノロジー・ラボラトリー(DTL)と呼ばれる連結子会社の研究所で開発された機械自動化システムが、要素部品の加工ラインで活用されている。

今月から本格的に稼働した横型マシニングセンターの生産ライン

従来は別々の機械の間で人の手で加工物が運搬され複数工程の加工がなされていたものを、同一の自動化ラインで行えるようにしたことで、設備費用を3分の2、人件費を3分の1に抑えられる。このシステムは機械を納入する顧客工場のラインにも適用されており、「全体がいわば『動くサンプル』。われわれは(生産技術に関する)コンサルタントとしての役割も担っている」(森社長)。

現地調達率の向上もカギ

もう一つのポイントが、現地調達率をどこまで高められるかだ。実は、北米工場立ち上げに当たっては、ここで思わぬ苦戦も強いられている。責任者である白鳥秀文・モリセイキマニュファクチャリングUSA社長は「(工作機械のカバーなどの生産に必要な)板金業者を見つけ出すのに苦労した。そもそもサンフランシスコ周辺はアルミやステンレスを多く使うITや医療などの産業が盛んであるため、スチール材の入手やその加工業者が少ない」と語る。8月になってようやくサプライヤーを確保できたという。

白鳥氏によると、現在の現地調達率は約4割。7割が目標だ。機械の土台となる鋳物、加工の質を左右する主軸やベアリングなど主要部品は現時点ではまだ日本からの供給を受けている。現地生産による為替影響の低減メリットを十分に生かすには、まだ時間がかかりそうだ。

業界からも「カリフォルニアで横型MCを生産できるのかは疑問」(国内大手メーカー幹部)、「リスクを挙げるとすればサプライチェーン」(大手証券アナリスト)との声が漏れ聞こえる。確かに同じカリフォルニアにはロサンゼルスに拠点を置くハース・オートメーションという工作機械大手メーカーがあるが、ハイエンドを重視する日本メーカーとは違う「汎用量産機専門」路線の企業だ。当然求める部品などのレベルも違ってくる。

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