中台韓勢に打ち勝つ、マザーマシンの突破口
自動車や腕時計、医療機器などの工業製品に組み込まれる各種精密部品。それを加工する装置が、「CNC(コンピュータ数値自動制御)自動旋盤」(=写真=)と呼ばれる工作機械である。工作機械は機械を生み出す機械。“マザーマシン”と呼ばれ、技術力の高さから日本勢が国際的な競争力を保っている。
世界のCNC自動旋盤市場でいえば、シチズングループのシチズンマシナリーミヤノ(非上場、本社・長野県御代田町)、ツガミ、スター精密という日本の大手3社で約8割のシェアを握る。一方、近年は中国、韓国、台湾といったアジア勢も自国の需要産業の成長とともに力をつけつつある。
先行する日本勢だが安穏ともしていられず、危機感を募らせている。CNC自動旋盤で世界シェア約3割とトップのシチズンマシナリーミヤノですら、そのうちの1社である。昨年4月に前身のシチズンマシナリーと、老舗メーカーのミヤノが統合して発足した同社。杉本健司社長(=下写真=)の言葉から、世界トップメーカーの戦略を読み解く。
「日本の工作機械メーカーはこの先『アウェイ』の戦いを強いられる。今まで通りやっていても食べていけない。機械を売る以外にどのような付加価値をつけるか。目指すのは『ソリューション』型の新たなビジネスモデルを構築することだ」
新たなビジネスモデルとは何か。その一つとして編み出したのが「個の量産」という概念である。自動旋盤は、本来同じ形状の小型精密部品を大量生産することを得意とする。それに対して、「個の量産」とは、部品を大量に生産しながらも、機械から出てくるものの形状を目的に合わせて変えられるようにするということ。たとえば、「歯」。虫歯治療に使われるクラウンのような、一人一人に合わせた形状の異なるものを量産できるようにする技術である。
「個の量産」システムで別々の形状の部品を次々に作り出す
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