米政府関係者はまた、韓国など日本が侵略した国の犠牲者を「軽視している」と見られることも懸念している。オバマ政権は長年に渡って日韓関係の修復及び、3カ国強力の強化に多大な努力を重ねてきたが、いまだ歴史問題をめぐる両国の緊張感を抑えるまでに至っておらず、今回の訪問がさらなる緊張を誘発することを恐れている。
実際、韓国内では今回の訪問について厳しい見方が相次いでいる。「朝鮮日報」は先頃「戦時中の行為に対して、日本は誠実な謝罪をすることを絶えず回避しようとしてきた」とする社説を掲載した。
「安倍晋三首相はかつて、侵略の定義はどちら側にいるかで異なるものだと語った。日本はこの首相になってから、原爆投下により大平洋戦争が終わったことを強調することによって、戦争の犠牲者のように振る舞っている。(中略)私たちも日本の帝国主義による犠牲国の一つだ。オバマ大統領による広島を訪問が、戦争の悲劇を引き起こしたのは誰なのか、本当の犠牲者は誰なのかを明確にしてくれることを切に望んでいる」と記した。
日本人は残念なほど広島訪問に対して無理解
昨年12月の従軍慰安婦問題の合意にかかわったある韓国政府高官によれば、日本との関係修復に携わっている政府関係者たちは、今回の訪問を支持している。しかし、訪問の影響については非常に神経質になっているという。訪問が安倍首相への理解を示すジェスチャーだと捉えられると国民の不満を煽ることになりかねず、極東地域でのより広範な和平を損ねてしまう可能性があると危惧しているのである。
こうした危険性を回避するために、原爆で命を失った韓国人のために在日韓国人によって建設された、平和記念碑内にある小さな記念碑を訪ねる、というのも米政府内では一つの案としてあがっている。正式には決まっていないが、今回の訪問がいかにデリケートな問題であるかを物語っているといえるだろう。
ところが、米政府関係者たちがこれだけ神経をとがらせているにもかかわらず、日本人の多くは、正式な謝罪が行われないにせよ、大統領が広島を訪問することには、米国人にとって原爆投下への遺憾の意を表すのと同等の意味があるという現実をまったく理解していない。戦時中に日本による侵略行為もあったことを考えると、オバマ大統領が訪問を決断することがどれほど困難なものであったかは米国人なら容易に理解できる。しかし、残念ながら日本人はまったくわかっていない、という声は米国内で少なからずある。
実際、米国内では過去の歴史を塗り替えかねないと捉えられる行為に対して非難の声があがっている。右翼の一部は、「(広島は)オバマ大統領の世界謝罪ツアーの次の停留所だ」と指摘しているほか、ジョン・ボルト元国連大使も「オバマ大統領が広島に行って謝罪することを知って、胃がムカムカし始めてきた」とツイート。また、右翼団体の一部はオバマ大統領に「原爆投下の正当性を改めて確認すべきだ」と求めている。
もっとも、今回の訪問を謝罪という文脈だけで考えると、重要性を見誤る。ホワイトハウスの元上級顧問によると、今回の訪問は彼が長らく続けている反核活動の一環として重要だからだ。
オバマ政権の国家安保会議で軍縮大量殺傷武器拡散テロ担当調整官を務め、現在はハーバード大学で教鞭を執っているゲイリー・サモア氏も、今回のオバマ大統領によるスピーチは、北朝鮮による核開発など現在世界が直面する核の脅威に焦点が当てられる可能性が高いと見る。目先の謝罪の議論に屈服するのではなく、中国、ロシア、北朝鮮、そして南アジアといった核保保有国に焦点を当て、できるだけ具体的な話をして欲しいというのが同氏の希望だ。
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