竹中平蔵(下)「リーダーは若者から生まれる」 批判に耐える力、健康、英語について
リーダーにとっては、健康も極めて重要だ。要職に就くと、病気ができなくなる。大臣に就任したとき、病気をできない怖さを初めて味わったが、これはつらかった。たとえ39度の熱があったとしても、はってでも仕事に行かないといけない。そうでないと、お前には大臣の資格がないと言われる。
そうすると、今までとは優先順位が変わってくる。何よりも睡眠時間をとることが重要になる。若い頃は、睡眠時間を削ってでも、論文を読む量を最大化するのが目的だった。しかし今度は、仕事を多少抑えてでも、睡眠時間を最大化するのが目的になる。このスイッチングをうまくやっていなかったら、今ごろ自分は死んでいたかもしれない。
野球選手を見ていても、一定以上のレベルになると、ケガをしないでどれだけできるかが、いちばん重要になる。その点でも、やはりイチローはすごい。
若い人は、生き急ぐぐらいでいい
もう1つ大事なのは、仕事を断る勇気を持つことだ。今も、海外出張の依頼がとても多いが、「あと自分の人生は何年あるだろうか」とわざと考えて、一部は断るようにしている。
30、40代の人にとっては、厄年というのが節目になることもある。医学の専門家の中には、厄年は何の科学的根拠もないと言う人もいるが、経験的には、厄年の時期に肉体の節目があるような気もする。
健康という意味でも、リーダーは若いほうがいい。ある歴史家によると、日本が太平洋戦争で負けた一つの要因は、幹部クラスの年齢にあるという。戦争は24時間の戦いなので、若くないと務まらない。60代や70代になって24時間起きていたら、判断能力がなくなってしまう。だから、政治のリーダーも若くなければならない。
若い人は、ちょっと生き急ぐぐらいでちょうどいい。「君は若いね、まだ青いね」と言われてもまったく気にせずに、30代で社長になればいい。
日本では、努力をすれば頭角を現せるチャンスがたくさんある。だから、チャンスに貪欲になることが大事だ。人にもよるが、自分自身でチャンスの芽を摘んでいることが意外に多いように感じる。「出る杭は打たれる」ことを恐れて、ほどほどでやる人もいるだろうが、「出すぎた杭」になれば打たれない。もしやりたいことがあるなら、今の会社をさっさと辞めて、アメリカに留学すればいい。