竹中平蔵(下)「リーダーは若者から生まれる」 批判に耐える力、健康、英語について

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若い人は、日本が貧しくなることにリアリティがないのかもしれない。しかし明らかに、日本中にウェイクアップコールが鳴っている。

日本の株価は、過去5年で半分になった。リーマンショックが起きたアメリカでも、株価は5年前とほぼ同じ水準だ。世界を見回しても、日本のような状況の国はない。

しかも、日本は貿易赤字になった。貿易赤字になったのは、地震でサプライチェーンが壊れて、原子力発電所が止まり、鉱物性燃料の輸入が増えたという理由もあるが、それだけでは説明できない。2012年8月の日本の輸出を5年前と比べると、なんと25%も減っている。対米輸出に限ってみると、36%も減っている。これは明らかに産業の空洞化が起きている。

ハーバード大学教授のロナルド・ハイフェッツが書いた『最前線のリーダーシップ』という本の中に、「リーダーはバルコニーに駆け上がれ」という言葉が出てくる。これは要するに、「鳥の目で見ろ」ということだ。ダンスホールで踊っているときに見える光景と、バルコニーに上がって、上から見える光景は違うことがよくある。

日本の貿易構造についても、一歩引いて俯瞰して見ることで、こうした大きな変化が起きていることに気付く。このように、鳥の目でリスク管理する力がないと、リーダーは務まらない。この「バルコニーに駆け上がれ」というハイフェッツの教訓は、リーダーにとって、ものすごく重要だ。とくに、若い人はゆとりがなくて、汲々としているだけに、このメッセージを意識した方がいい。

安倍さんにはリーダーの素質がある

もう1つ、リーダーは絶対にご用聞きになってはいけない。民主主義のリーダーは、みんなの意見を聞かなければならない。しかし、リーダーの役目はあくまで「こうしようではないか」と皆にビジョンを与えることにある。ただ残念ながら、ここ3年ぐらいの政治は、みんな御用聞きになってしまっている。「国民の生活が第一で、みなさんが困っていることを助けてあげますよ」と言っても、そんなこと実現できるわけがない。

リーダーとは、「痛みを超えて、こうしようではないか」とビジョンを示して、組織に変化を持ち込める人だ。軋轢や批判に耐えて、周りを説得しながら、新しいものを生み出していくのが本当のリーダーだ。

リーダーというのは、必ずしも天性のものではない。人はポジションによって大きく化けることがある。私は、安倍晋三さんにはリーダーの素質があると思うし、ほかに、自民党では菅義偉さんや塩崎恭久さん、民主党では前原誠司さんや古川元久さんにも期待している。

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