ただ、たとえ13年であってもユーロ共同債が実現すれば、欧州の債務問題は早期に解決へと向かって動き出すことができます。破綻する可能性のある国が、ユーロ圏ではゼロになるからです。
「日本の失われた10年」と同じ道
ところが、実体経済のほうはそう簡単にはいきません。たとえ債務問題が落ち着いたとしても、欧州経済はしばらくの間、低迷を余儀なくされます。欧州は今の米国やかつての日本よりも深刻な状況に陥っているからです。
欧州もかつての日本の「失われた10年」と同じ道を進んでしまっています。一連の危機が金融機関の財務を直撃し、そのことが「貸し渋り」や「貸し剥がし」を引き起こしているのです。
先進国、新興国にかぎらず、雇用の中核を担っているのは中小企業です。どの国においても、中小企業が実体経済の大部分を担っています。したがって、景気の先行きを見るにあたっては、中小企業の動向に注視しなければなりません。
ECBは11年12月と12年2月の2回にわたって、域内銀行に巨額の資金を融通しました。実質的には、米国が行った大規模な量的緩和と同じことを実施したのです。にもかかわらず、中小企業への融資はいっこうに伸びていません。そのことが実体経済を落ち込ませています。
欧州域内の銀行は大小問わず、財務が深刻な状態に陥っています。ユーロの誕生によって、欧州の銀行は国境を越えて過大な投資をした結果、金融バブルの崩壊で巨額の損失を抱えてしまいました。欧州はとうとう銀行のバランスシート不況にはまり込んでしまったのです。
バランスシート不況とは、バブルが崩壊し資産価値の急落が起こると、債務超過となった企業が財務内容を修復するために、投資や労働コストを抑えて、借金返済を優先するようになることをいいます。
債務超過となった家計が、消費を抑えて、借金返済を優先するようになる場合にも、この言葉は使われます。前者が日本型、後者が米国型のバランスシート不況です。
いずれの場合も、投資や消費が伸びずに、実体経済に悪影響を及ぼしてしまいます。銀行の場合は、貸出や新規融資を減らすことが、財務内容を修復させる行動に当たります。その結果、いくら中央銀行が金融緩和を行っても貸出は伸びず、企業の設備投資や労働者の賃金が抑制されて景気が悪化してしまうのです。
欧州のバランスシート不況でタチが悪いのは、それに加えて南欧諸国が財政危機に陥っている点です。南欧諸国の緊縮財政が経済をさらに悪化させ、徐々にユーロ圏の経済を蝕みつつあります。
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