今の欧州経済は、日本経済が1990年代の後半に不良債権処理で苦しんでいたときの状況とよく似ています。当時、日本の銀行は自己資本比率を高めるために、資本を増やすよりも総資産を減らすという誤った選択をしました。その結果、貸し渋りや貸し剥がしが横行し、雇用者の賃金は下落に転じ、デフレを深化させてしまったのです。
「2015年問題」を克服できるのか
今まさに、欧州の銀行も日本と同じ過ちを繰り返しています。銀行が貸し渋りや融資の回収をすることで、企業は借り入れができず苦しい状態に陥っています。
さらには、借金返済を優先させるために、事業規模の縮小や人員の整理を進めていかざるを得ません。成長企業でさえも借り入れができないケースが増え、せっかくの事業や雇用を拡大するチャンスを奪われることになりかねません。
経済の血液ともいえる金融の収縮は、間違いなく中小企業を中心とした実体経済の落ち込みをもたらします。かつての日本と同様、欧州の国々の人々も生活は今よりも厳しくなっていくことでしょう。
さらに、欧州には2015年に懸念すべき材料があります。さきほど述べたように、ECBは11年12月と12年2月の2回にわたって、域内銀行に巨額の資金供給を行いました。その資金の返済期限が15年(正確には14年の年末)にやって来るのです。2回あわせた資金供給の総額は、1兆ユーロ(約105兆円)にも及びます。
ECBは無事に資金を回収できるのでしょうか。仮に回収できないような事態となれば、欧州の金融システム不安はいっそう深刻化することになります。そうなれば、欧州経済はさらなる混乱、負のスパイラルにさらされることは必至です。
前回の連載でも指摘したように、バランスシート不況が沈静化するためには、10年単位の時間が必要です。特に銀行による不動産の売却は、さらなる不動産価格の下落を招き、融資先の担保価値をも下落させてしまいます。その結果、債務超過に陥る融資先が増加し、銀行の財務を一段と悪化させるという悪循環にはまってしまうのです。
そう考えると、11年に始まった債務危機から10年、つまりは2020年頃までは、欧州経済は本格的な回復が期待できないと見るべきなのです。そして、万が一にも2015年問題の対応に失敗するようなことがあれば、失われるのは10年どころか、20年になる可能性も意識しなければなりません。
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