「持たない経済」で得する人、損する人 大前研一が語る「アイドルエコノミー」

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身の回りにある“使っていないもの”やリソースはすべて、アイドルエコノミーの事業機会になり得るのです。

既存の業界秩序を破壊するアイドルエコノミー

メーカーが物を作り、販売会社や代理店を通じて販売するのが、従来型の一般的なビジネスモデルです。しかしアイドルエコノミーにおいては、インターネットが代理店、エージェントの役割を果たします。この方法で急成長する会社が増えています。

この新しいやり方では、後続の競合相手に追い抜かれないために、先行者がかなり注意深くビジネスモデルを作る必要があります。インターネットオークションサービス「ヤフオク!」のように、互いの顔が見えないインターネット上でも信頼して取引できる仕掛けを作れば、皆がその場所を利用するようになり、勝ち抜けることができます。これが「インターネットをエージェントとして利用する」ビジネスの成功の鍵になります。

インターネットをエージェントとして利用することで、アイドルエコノミーはあらゆる業種に急速に広がっています。タクシー業界では配車アプリの「Uber」。ホテル業界では、個人の所有する空き部屋を仲介するビジネスモデルで世界第5位のホテル予約サイトに上りつめた「Airbnb」。リフォーム業界では、リフォームしたい人と専門家をつなぐ「Houzz」。システム開発では、世界最大のクラウドソーシング企業「Upwork(旧oDesk)」を筆頭に、プレーヤーが次々と参入しています。日本では「クラウドワークス」が最大手です。印刷業界では日本の「ラクスル」に資本が集まっています。自社は印刷機械を持たず、印刷会社の空いている機械を活用してチラシや名刺などを印刷するというビジネスモデルです。

メディア業界にも大変革が起こっています。「LINE NEWS」や「グノシー」など、自社に記者を置かずにニュースを集めてくる、いわゆるニュースキュレーションサービスの台頭です。「LINE NEWS」や「SmartNews」のアプリダウンロード数は、今や読売新聞の発行部数を上回っています。

このように、インターネットをエージェントにし、既存の業界秩序を破壊するアイドルエコノミーが、ここ数年の間に、驚くほどたくさん出てきているのです。

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