大前研一「高齢者のやけっぱち消費を狙え!」 理論ではなく「心理」が経済を動かす

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大前研一さんが 「企業は“やけっぱち消費”のお金を有効活用せよ」というワケとは?
安倍首相は国民に「もっとお金使ってください」と積極的な消費を呼びかけていますが、国民はなかなかお金を使いません。新著『ニュースで学べない日本経済』を出版した大前研一氏は「企業は“やけっぱち消費”のお金を有効活用せよ」と述べています。「やけっぱち消費」とは何か? そこに景気回復の糸口があるのか? 大前研一氏に聞いてみました。

世界に類を見ない日本の「低欲望社会」

今、日本の企業や家計は潤沢な資産を保有しています。これだけお金を持っているのに、使わない。これほど金利が下がっても、お金を借りない。この状況が世界にも類を見ない日本の「低欲望社会」です。お金がたくさんあっても、企業や個人にお金を使う欲望がないのです。

なぜお金を使わないのか。明確な理由があります。染色体に「将来の心配」という特性が宿っているのです。

日本人はもともとこれほど心配性だったのかというと、そうではありません。われわれの世代が育ったころの日本人は、「坂の上の雲」を目指して、世界に出ていこうという志を持っていました。今よりも貧しい生活をしていたけれど、将来の心配などしていなかった。

松下幸之助は、英語がしゃべれないのに世界へ出ていきました。本田宗一郎は高等小学校しか卒業していませんが、世界のホンダをつくった。昔の日本人は、今よりもずっと楽観的だったのです。

現代の日本人には、老後の生活について若い頃から心配するという特徴があります。「老後の生活についての考え方」というグラフを見るとそれがよくわかります。老後の生活を心配している人が、1992年の60%台から、2014年は90%近くまで増えています。心配していないという人が10%強。この20年間で、心配している人が明らかに増えています。

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