空き家問題に一石、行政「強制撤去」の新展開 和歌山では「景観損なう」を理由に代執行
周囲の景観を損なうことなどを理由に、和歌山県は3月上旬、那智勝浦町の老朽化した空き家を行政代執行で撤去した。老朽化を理由とした撤去の行政代執行は多いが、景観を理由にすることは全国的に珍しいという。
報道によると、撤去作業が始まったのは、那智勝浦町勝浦にある、およそ50年前に建てられた木造2階建ての住宅。10年以上前から空き家となり、壁が壊れたりツタが茂ったりしたまま放置され、周囲の景観を損ねていた。所有する女性に修理や撤去を勧告しても応じないため、県は景観に関する条例に基づき、行政代執行で撤去することを決めた。
景観を理由に建物を代執行で撤去することをどう考えればいいのか。空き家問題に取り組んでいる中島宏樹弁護士に聞いた。
持ち主に代わる「強制撤去」の是非
「根拠となるのは、和歌山県において2012年1月1日に公布された景観支障防止条例です。この条例は、著しく劣悪な景観により県民の生活環境が阻害されることの防止を目的に定められました。
条例では、建築物等が廃墟化し景観上支障となることを禁止しています。そのような廃墟については、(1)周辺住民からの要請、(2)所有者に対して除去等の勧告・命令、といったステップを経た後、行政が代執行、つまり、持ち主に代わって強制的に撤去することができます」