iPhone7は3種類?「モデル急増説」は本当か 成熟期に対応したビジネスモデルを模索

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では、iPhone 7のモデルが増加するという噂には真実味があるのだろうか。実際にモデル数が増加するかどうか、筆者は確実な情報は持っていない。しかし、彼らは追加モデルを用意する可能性があると考えている。

近年のアップルは成熟期を迎え、典型的なイノベーションのジレンマに陥っているという見方もある。しかし、クラウド型サービスを中心としたスマートデバイスの業界は、アップルを中心軸に回っている。今後、微調整が必要としても、自らその回転軸をズラしていく必要はない。少しずつ、時々の市況に合わせて製品を調整していく方がいい。

たとえば昨年、アップルは12.9インチディスプレイを持つ大型のiPad Proを発売した。「こんなに高価で大型のiPadなど売れるはずがない」との批判もあったが、そもそもアップル自身、12.9インチiPad ProがiPad Airシリーズ並みに売れるとは想定していなかっただろう。
しかし、12.9インチiPad Proは企業ニーズや特定業務用途、それに大きなキャンバス(画面)とApple Pencilを組み合わせて使いたいコンシューマなど、従来製品だけで適応できなかったニーズに応えることで消費者との接点を増やすことができる。

革命者ではなくなったが…

同じ事はiPhoneシリーズにも見られる。iPhoneアクセサリメーカーによると、iPhone 6Sと6S Plus向け製品の販売比率はおおよそ4:1だという。これは実際に市場に出回っている端末も、この比率に近いことを意味している。だからといって、市場の2割しかないと思われる大画面iPhoneが不要という論は成り立たない。

したがって、アップルがスマートフォン市場の成熟によって、さらに追加バリエーションが必要と判断したならば、基本設計を共有する追加モデルを準備していても不思議ではない。新たに導入する技術が実験的なものならば、なおさらだろう。

アップルは新しい時代の中心へと世の中を誘う革命者ではなくなったかもしれないが、いまだ良質の製品を生み出しているメーカーであることに変わりはない。ハードウェアの質という面で、アップルを越えるようなスマートフォンメーカーやパソコンメーカーが勃興しているわけではない。

いずれにしろ、6月のWWDCではアップルの将来戦略を探るうえでのヒントが提示されるだろう。WWDCは開発者向け会議ではあるが、その秋の新製品を成功させるため、開発者に一部の情報を開示することで、アプリ開発の準備を整えるのが通例だからだ。

iPhone以降、スマートフォン、タブレットの進化を牽引してきたのはアップルだ。そのアップルは再び成長軌道へと戻ることができるのか。大幅改良となるiPhone 7と搭載されるだろう「iOS 10」は、アップルのみならずスマートデバイス産業全体にとって重要なアップデートとなるに違いない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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