瀧本哲史「リーダーがいなければ自分がなれ」 瀧本哲史のリーダー論(上)

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最近、講演をするときに、「ワイマール共和制を知っていますか」と聴衆に尋ねているが、知らない人が多い。受験勉強で、日本史や地理のほうが点数をとりやすいから、みんな世界史をしっかり勉強していない。

しかし、ワイマール共和制の知識は極めて重要だ。ナチス・ドイツが出現する前に、ドイツは極めて理想的な憲法を制定し、理想的な民主主義国家をつくろうとした。しかし、それはうまくいかず、人々は絶望してナチスによる独裁を選んだ。

そうした歴史な経緯を知っていれば、これからの日本で起きかねない怖いシナリオがすぐ理解できるようになる。それこそが教養の本質であって、世界史の年号や言葉を暗記することに意味はない。

山中さんはなぜノーベル賞を取れたのか

これからの時代に求められるのは、中央集権的なリーダーではなく、群雄割拠的なリーダーだ。リーダーというとき、われわれは大きい組織のリーダーをイメージしがちだが、真に必要なリーダーは、最初は一人だったりする。

瀧本哲史(たきもと・てつふみ)
京都大学客員准教授・エンジェル投資家
東京大学法学部卒業。同大大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニー勤務。独立後は投資業とともに、京都大学で教育、研究、産官学連携活動を行う。著書に『僕は君たちに武器を配りたい』(『武器としての交渉思考』『武器としての決断思考』がある。

たとえば、ノーベル賞を受賞した山中伸弥さんも、賞につながるきっかけは、臨床医に挫折した後、奈良先端科学技術大学院大学で研究者として働いているときにあった。

日本の劣悪な環境に絶望しながらも、何とかメンバーを集めるために、みんなと違う研究テーマに取り組もうとして、独立行政法人の科学技術振興機構に予算を申請した。審査会では、ほとんどの人が「この研究はやめるべきだ」と反対した。ところが、元大阪大学総長の岸本忠三さんだけが、「これはやるべきだ」と言って予算がついた。それが、ノーベル賞受賞へとつながった。

だから、今求められているのは、山中さんのように、リスクが高い、うまくいくかどうかわからないことを最初に始める人だ。

リーダーの仕事とは、大企業のサラリーマンたちのやる気を無理やり出させることではない。そういうリーダーは日本に余っている。本当に必要なリーダーは、何もないところから始める一人目だ。もし、そういうリーダーが周りにいないなら、あなた自身がリーダーになって、新しいことを始めればいい。

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