なぜ欧州の観光客は日本よりタイを選ぶのか アトキンソン氏「距離より深刻な問題がある」

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これを構成比で置き換えると、欧州からが29.7%、南北アメリカからで9.8%。そしてアジアからは55.3%となります。この推計は、米国政府等のデータにある、遠方からの観光客は全体の45%という傾向と一致しています。

これを今の日本の外国人観光客の割合と比較すれば、それぞれのエリアから均等に来ているのか、あるいは偏っているのかということがわかります。

ただ、ここでひとつ問題があります。世界の市場規模はまだ2014年のデータしか出ていません。一方、日本のインバウンドが飛躍的に伸びたのは2015年ですので、2014年の訪日客数を使って比較してもしょうがありません。つまり、アナリストとしては非常に不本意ではあるのですが、2014年の世界市場のデータを、2015年の訪日外国人観光客の分析に用いているのです。

しかし、このような比較をしないことには、急速に成長している日本のインバウンドの実態と、そこに潜む課題が見えてきません。過去の国連データを見ても、1年でそこまで大きな変化は起きないと思いますので、異なる年のデータを分析に用いることをご理解ください。

欧州からの観光客には、巨大な開拓余地がある!

では、国連のデータと日本のインバウンドを比較してみると、どのような事実が浮かび上がるのでしょうか。

結論から先に申し上げると、「欧州からの観光客開拓に極めて大きなチャンスがある」ということが顕著になっています。

UNWTO(2014年)、JNTO(2015年)のデータを元に筆者作成。UNWTOの「アジア」はオーストラリアなどを含む

2015年の訪日観光客はアジアが86.5%を占めており、来日潜在市場の構成比である55.3%と比較しても際立って高くなっています。それは、中国などのアジアからの観光客が多すぎるということなのか、他地域が少なすぎるということですので、潜在能力と比較してみる必要があります。

アジアからの来日潜在市場は2億1432万人なのに対し、実際にはその8.0%の1707万人しか来日していません。これは、まだまだ伸ばしていく余地がある数字です。

ということは、アジアは多すぎではないということなので、他の地域が少なすぎるという結論が導き出されます。つまり、アジア以外の地域の実績を伸ばしていかなければいけないということです。

アジアの次に多くの人が訪れているのは、南北アメリカからで138万人(7.0%)となっています。これは来日潜在市場の構成比である9.8%と比較しても、そこそこの実績といえましょう。これはやはり、北米と日本の長年の関係で、観光客誘致にも力を入れてきた成果だと思われます。

そして、問題が欧州からの観光客です。世界の国際観光客の50.8%、来日潜在市場の比率でみても29.7%という潜在能力があるにもかかわらず、現実に日本を訪れているのは124万5000人足らずで、全体の約6.3%に過ぎません。これは「欧州は日本から遠く離れている」という距離の問題では片付けられないほどの少なさです。

つまり、今の日本のインバウンドは、アジア、アメリカからの観光客と比較して、欧州からの観光客が際立って少ないという現実があるのです。

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