海苔ビジネス、「粉末化」で拓けた新しい道 その用途は離乳食にも化粧品にも

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中小企業が新ビジネスに取り組む場合、入江社長のように、女性ならではの発想が生きる場合があります。それと共に、新しい人材も必要です。それが小林常務でした。異業種の人材を迎え入れることで、道が開かれる可能性は大きいと思います。

優れた技術者が海外の会社に転職し、その結果、日本の独自技術の流出が懸念されています。転出後の雇用もそれほど保証されていない、という話も聞きます。大企業の研究者や専門技術者を同じ日本の中小企業が受け入れて活用するのも、ひとつの解決策なのではないでしょうか。鍵庄が、その見事なモデルケースだと思います。

「ノリの壁」を破って事業多角化

超微細粉砕技術で500アイテム以上を粉砕

その粉砕技術を聞きつけて、食品業界から、お米、パン、鰹節、キノコなど実にさまざまな素材が持ち込まれるようになりました。大手ではやっていない超微細粉砕技術(ジェットミル粉砕)で、すでに500アイテム以上を粉砕してきました。「ノリの壁」を破ったことにより、事業の壁も破り、受託粉砕加工という新規事業が立ち上がったのです。

超微細粉砕のメリットは大きく3つあります。

まず「食感」です。0.01ミリを越えた粉末に触れると舌はザラつきを感じます。逆に果肉を超微細に粉砕すれば、キャンディ、アイスクリーム、プリンに入れても違和感がありません。

次は「混濁状態の維持」です。粉末のお茶をお湯に入れると下に沈殿することがありますが、充分に細かくないからです。超微細にすれば均一に混ざり、良好な分散状態が維持されます。青汁などの粉末飲料にも必須の機能です。

3つ目は「素材の良さの最大限発揮」です。1つの粒子を細かくすればするほどその表面積が大きくなることは、なんとなく感覚的にわかります。でもその規模は予想をはるかに超えていました。小林常務によれば「1辺の長さが1センチの立方体に比べ、それを細分化して1辺0.01ミリの立方体にすると、表面積は1000倍になる」そうです。それだけ、その食品の持つ旨味成分、健康増進機能が引き出せるという訳です。

こうしたメリットを食品業界という広い視野で見ると、素材の微粉末化は、エシカル(倫理的)な消費トレンドにぴったりです。茶がらの出ないお茶、出汁がらの出ない出汁など、素材の100%活用により、廃棄物を極力減らして環境に優しいものづくりが可能となります。経済的に見ても、廃棄処理費用が圧縮でき、コスト的にも大助かりです。

関西人は「粉もん」好きと言いますが、明石の海から究極の粉もんが上陸したと言えるかもしれません。最近、近くの工場を改修して、受託した素材を粉末化するだけでなく、前段階の乾燥、殺菌、そして粉砕後の顆粒化(これで溶解性を高める)まで一連の粉砕事業がワンストップでできるようになりました。ますます受託粉砕加工事業の成長が見込まれます。

海苔の壁を破って生まれた「粉もんビジネス」の今後に期待したいと思います。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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