ソニーをダメにした、「派手な成功」狙い 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(第2回)
経営改革のカギ一つが経営者であり、経営者の人の使い方ともいえる。経営者を支える一つ下のレイヤーの人材をどう使うかがカギとなる。
日本の場合、圧倒的な専制君主になれるのは創業者だけだ。創業者ではない人が中興の祖になるにはミドル層に軍団を作らないといけない。そうしないと日本の会社は回らないから。トップダウンでビジョナリーであることに加えて、中堅層を上手に使うことができるリーダーが必要だ。
トップダウンとボトムアップの二つの力を働かせないと日本の組織は動かない。上からだけ歯車を押そうとすると、下から抵抗する力が働く。すると、歯車が動かないか、下手をすると逆回転する。そうではなく、下からも歯車が回る方向にきちんと押すように裏側でオルグしておかないといけない。
「米国流CEO」は通用しない
日本の電機メーカーのトップが、「俺はアメリカ流のCEOだ」とわめいてみても組織は動かない。「こいつは何を言っているんだ」でおしまい。アメリカ流のCEOだと言ってみたところで周りがそう思わなければそうならない。
では、創業者ではない経営者が、改革を実行しようとしたら、ミドル層のコア、キーになっている人間を握らないといけない。トップが50代なら、40前後、場合によっては30歳代に紅衛兵とまでは言わないが、それに近いものを組織化しないといけない。大きく会社の形や組織の有り様を変えていくときには、意思決定=ディシジョンだけではできない。実行する段階が重要になる。
日本の現場は、現場にとって愉快なことを実行するときはおそらく世界最強だろう。これは震災後の復旧を見ればよくわかる。問題は、企業の構造改革は現場に不愉快なことをやってもらう必要がある。それはやはり簡単にはいかない。
現場に不愉快なことを「俺はアメリカ流のCEOなんだから、お前ら言うことを聞くべきだ」と言ってみたって「お前、昨日まで横にいた奴だろう。なんでお前の言うことを聞かなくちゃならないんだよ」と言われた瞬間に、改革はとん挫する。