ソニーをダメにした、「派手な成功」狙い 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(第2回)
成熟経済になった途端、産業界の序列はナンセンスになる。日本では、経済なんとか連合会とかにそうした序列はまだ残っている。だから、日本国の経済はダメになっていく。アホじゃなかろうかと思うんだけど。
実際に世界の経済をけん引しているのは、少なくとも先進国においてはそうした古い序列で一流とされた産業ではない。
旧電電ファミリーという病巣
NECや富士通はこれまで述べてきた電器メーカーとしての問題に加えて、旧電電ファミリーという病巣も抱えている。電電公社が仕様を決めて、それに合わせてモノを作ってきたという問題だ。単なる下請け意識に加えて、特殊な国家独占資本のほうを向いてしまう、二重三重に内向きになる。
NTTグループが持つ要素技術は本当に半端じゃない。クアルコムに対抗できる位のW-CDMAの技術を持っていたわけだから。NTTやNTTドコモに引っ張られて、旧電電ファミリーも要素技術ではある瞬間、ユビキタスの世界で最先端に立っていた。瞬間だけど。アイフォーンが出てくるまではアップルだって敵じゃかった。
アップルがアイフォーンを出す前は、旧電電ファミリーや松下通信工業などは今のアップルのように大化けする可能性はあった。そのポテンシャルを考えたとき、「なぜかくもガラパゴスの罠にはまらなくちゃいけなかったのか?」という失望は大きい。
ただし、シャープなどに比べると、旧電電ファミリーはB2B(BtoB=企業向け取引)モデルだから安定している。
日本は通信会社が技術をリードしてきた世界の中でも特殊な産業形態。NTTがつくった世界の中に閉じ込められてしまう。ただ、見方を変えれば、その世界はお客さんとすり合っている世界。外の人が入ってきにくい世界が形成されている。エントリーバリア(参入障壁)が高い。