ソニーをダメにした、「派手な成功」狙い 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(第2回)
社内昇進のトップではなく、社外から来た人であっても改革は難しい。一つ間違えると裸の王様になる。それで失敗しているケースもある。欧米でCEOといったら、そういうもので偉いとみんなが思っているからいい。だけど、日本のCEOというのは社長だとダサいからCEOと付けていますといったなんちゃってCEOなんだ。
上でギャーギャー言えば聞くほど、日本の企業も官僚機構も甘くない。あからさまに抵抗してきたら鎮圧できるからまだいいが、面従腹背されたらどうしようもない。「はいはいわかりました」と言われて牛歩戦術されたらどうしようもない。「障害がありまして、苦労して前に進んでいます」といった報告で時間稼ぎをしながら、腹の中では「どうせこいつは3~4年でいなくなる」と思っている。
経営者は紅衛兵を持て
その中で、企業を変えていくというのが、まさに経営者の腕の見せ所でもある。執行役、部長、課長などそれぞれのレイヤーの中に紅衛兵のようなやつをオルグして、下放していかないと改革は起きない。
そうした日本の組織をよくわかっていたのがカルロス・ゴーン氏。彼は、部門横断のクロスファンクショナルチームを作って当時40歳前後の人間を抜擢して全部権限を移管した。日本の企業社会は、トップダウンでギャーギャー言ってもみんなに面従腹背されたらどうしようもないということを、彼は知っていた。
ゴーン改革って、トップダウンでバッサリやったことだと思っている人は多いが、それは誤解だ。彼はマイクロマネジメントではなく、マクロマネジメントの人。細かいことを言わず、マイクロは任せている。そうでなければ、みんなが抵抗運動をやってゴーン氏を追い出そうとなった。もちろん、系列とか切ったところもある。それは戦略ビジョンとしてあれは壊さないとどうしようもないというのがあったから。ただし、それは単にコスト論ではなく、自動車産業の構造論・産業組織論の戦略ビジョンとしてやっていた。
少なくとも稲盛和夫さんだってそれに近いことをJALでやっていた。ものすごいオルグをやってアメーバ経営の刷り込みからすごい時間をかけていた。そのシンパ代表が社長の植木義晴さん。そういう人たちを50代前後から40代まで作った。さすがに稲盛さんは企業経営のなんたるかを心得ている。
エレクトロニクス業界でも、そういうことができる経営者が出てきて欲しい。
(撮影:今井 康一)
※:インタビューの続きはこちら:JALの公的再生は失敗だ
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