「アップルにソニーが2度目の大敗」の重み 9年前にもあった惨めすぎる敗戦

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2005年9月22日、経営戦略説明会で「打倒iPod」を企図したAシリーズを掲げるソニー経営首脳(左、撮影:大隅智洋)。それから9年後、アップル新製品発売の直前に、ソニーは苦渋の決断をすることになった(右、撮影:尾形文繁)

アップルの最新スマートフォン「iPhone 6」シリーズの発売に湧く中、ソニーはスマートフォン事業の不振から巨額の減損処理を行うことを明らかにした。

ちょうど9年前の2005年9月にも、ソニーとアップルが残酷なまでの明暗の差をみせたことがある。同年の9月8日にソニーが満を持して、ウォークマン「Aシリーズ」を発表(発売は11月)。打倒アップルを宣言したものの、アップルは米国時間の9月7日、ちょうど同じ日に圧倒的にコストパフォーマンスに優れた「iPod nano」を発表と同時に発売してみせた。

この"敗戦"から9年、ソニーは幾度となく敗戦を経験してきたとはいえ、「対アップル」という視点で俯瞰すると、2度目の大規模な敗戦と言っていいだろう。ただし、今回の敗戦の構図は、前回とは大きく異なっている。スマートフォンという完成品では圧倒的な差を付けられており、むしろライバルというのが恥ずかしいくらいの状況になってしまった。それどころか、ソニーはiPhoneに使用されるCMOSセンサーのサプライヤーだ。ソニーにとって、アップルは最重要顧客でもある。

遠のいたエレキ復活宣言の日

平井一夫社長が掲げたエレキ部門3本柱のうち、ゲーム事業とデジタルイメージング事業は比較的好調だ。しかし、ソニー復活のカギとみられてきたスマートフォン部門の赤字のインパクトは大きい。テレビ分社化、PC事業売却などのリストラが順調に進んだとしても、「エレキ部門復活」と宣言できる日が遠のいた、という意味で重い発表だ。

赤字の大部分は新興国向けに計画していた普及価格帯のスマートフォン事業から退くための減損、およびソニーエリクソン買収時の暖簾代一括償却だ。事業縮小に伴い、本社人員と海外販売会社社員を約1000人削減するという。ソニーは構造改革費として1350億円を計上しているが、今回の追加削減で構造改革費が膨らむ可能性もある。

ソニーは2013年から投入した高級スマートフォン「Xperia Zシリーズ」が日本および欧州の一部で人気を博し、その後、欧州でも人気が拡大していた。欧州先進国ではiPhoneよりも高級Androidスマートフォンの人気が高い国が多い。たとえば、最新機種のXperia Z3を発表したドイツでは、販売店における売り上げランキングでも上位に複数のXperiaシリーズが名を連ねていた。

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