ここで一度、今ご覧いただいた3つのケースのシミュレーション結果をまとめておきましょう。
ケース1:厳格な男女格差が存在する場合
男女間給料比率=37.5%
社内で結婚するカップルの家計間給料格差=2.14倍
ケース2:高所得女性が出現した場合
男女間給料比率=68.5%
社内で結婚するカップルの結婚後の家計間給料格差=2.86倍
ケース3:低所得男性が出現した場合
男女間給料比率=100%
社内で結婚するカップルの結婚後の家計間給料格差=10倍
今、ご覧いただいたモデルでは、ケース2で男性と同額の給料をもらう女性、すなわち高所得女性が登場したことにより、男女間の給料比率が、37.5%から68.5%にまで縮まると同時に、家計の所得格差が2.14倍から2.86倍に広がりました。
そして、ケース3では低賃金の男性従業員、すなわち、低所得男性が現れたことによって、男女間の給料格差はなくなり、まったくのイーブンになりましたが、その結果、家計の給料格差は10倍にハネ上がりました。
このように、「高所得女性」と「低所得男性」が出現し男女間の給料格差が縮小すると、家計間の所得格差は反対に拡大してしまうのです。
今のモデルケースは設定が少々極端だったので、現実世界でこんなことが起きているとは、にわかには信じがたいと感じられた方もいらっしゃるかと思います。
しかし、このケースの示唆が絵空事ではないことは、過去のデータが証明してくれるのです。
「男性不況」と「世帯所得格差の拡大」の関係
男女別の賃金格差と家計所得格差の相関関係を分析すると、両者の間の正の相関関係が確認できます。
決定係数(R2)は0.6548ですので、家計の所得格差が拡大したり縮小したりする理由の約65%は、男女の賃金にどれだけ差があるのかという要因により説明できます。
つまり、女性の賃金が男性の賃金に近づけば近づくほど、お金持ちの家庭と貧乏な家庭の所得の差が大きくなることは、モデル上だけでなく、実際の統計データのうえでも十分に確認できるのです。
男性の職場が減り、給料も減る一方、女性の社会進出が進んで男女間の給料格差が縮まる流れは、今後も長く続くと見込まれています。よって、職種間の賃金体系の見直しなどが進まなければ、家計間の収入格差はこれからもますます広がることが予想されます。
「男性不況」がこのまま進めば、格差の拡大だけではなく、男女の関係、そして社会の構造すら変えかねないほどの大きな衝撃が生まれます。次回以降は、その「衝撃」にスポットライトを当てていきましょう。(第3回に続く)
編集協力:王地 築(ライター)
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