JR東海、想定外の「異常時」に乗客を守れるか 新幹線内の火災事件を教訓に避難訓練を実施

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JR東海は細かく設定したシナリオの下で大掛かりな避難訓練を実施した(撮影:尾形文繁)

闇夜の向こうに停車している新幹線の先頭車両から、“乗客”が一人、また一人、はしごを使って地上に降り、線路脇を歩いて安全な場所に避難を始めた。その姿を追う報道陣のカメラの列。「一人ずつ歩くと絵にならない。固まって歩いてほしい」。どこかの社のカメラマンが要請したが、「実際の状況を想定した訓練。演出はしません」と一蹴された。

5月10日深夜、どしゃぶりの雨の中、静岡空港の西側にある東海道新幹線・第二高尾山トンネル付近で、乗客の避難誘導訓練が行なわれた。

JR東海は毎年車両基地で行なう「総合復旧訓練」で、異常事態を想定した乗客の避難訓練を実施している。営業運転終了後の深夜の時間帯には、営業線を活用した今回のような避難訓練もこれまで何度も行なっている。たとえば2012年5月にはトンネル内で停止した列車で火災が発生したという想定で避難訓練を行なった。これは前年に起きたJR石勝線トンネル内の脱線火災事故を踏まえてのものだ。2015年5月には首都直下型地震が発生して乗客を新横浜駅に徒歩で誘導させるという訓練を行なった。

昨年の火災事件を教訓に

2015年6月30日に走行中の列車内で男性が焼身自殺を図り、巻き添えになった乗客1人が死亡した事件は記憶に新しい。この事件を受けて、今回の避難訓練は以下のようなシナリオで行なわれた。

静岡―掛川間、下りの「のぞみ」号の車内で4号車の前方デッキで火災が発生、火災に気づいた乗客が非常ブザーを押した。運転士は非常ブザーが押されたことに気づき、デッキに設置された防犯カメラ映像で火災の発生を確認、トンネルと橋梁を避けて列車を停止させた。

運転士の連絡を受けて3人の車掌が火災が発生した車両に急行。たまたま出張で3号車に乗車していたという想定の社員3人が、「協力社員」として非常通報装置を使って車掌に火災発生を連絡するとともに、3号車の乗客を前方の車両に避難させた。

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