解雇は当たり前、ニッポン雇用の修羅場 “美談”は遠い昔の話

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日本では労働規制が厳しく、正社員を辞めさせることは難しいと言われてきた。確かに「労働契約法」には、客観的に合理的で社会通念上相当と認められない解雇は無効とする、「解雇権濫用法理」が定められている。

整理解雇の4要件は表面的な話

また会社の経営上の必要から行う整理解雇に関しても、その(1)必要性や(2)回避努力義務、(3)人選の合理性や(4)手続きの合理性といった「整理解雇の4要件」を満たす必要があるとされてきた。企業の労務担当者は、日本ではギリギリの経営状態まで追い込まれない限り、解雇はできないと考えてきた。

ルネサスの赤尾泰社長。想定以上の応募者数になったため、割増退職金を3分割で支払うことを余儀なくされた

ただし、それは表面的な話に過ぎない。労働問題に詳しい弁護士は実情を語る。「日本では解雇に比べて退職勧奨や配置転換への制限はゆるい。こちらを活用するのが通常だ」。実際、NECグループにみられるように、希望退職者を募るためにこれらはフル活用されている。

法律上では、退職勧奨それ自体は問題ない。ただ繰り返し執拗に迫る、脅迫するなどの強要は違法だとされてきた。冒頭の事例は違法性が高そうに見えるが、そこまで踏み込めた背景には、労務担当者の間では著名な、昨年末に東京地裁が出したある判決がある。「この判決が昨今の激しい退職勧奨の引き金となったのではないか」と、日本労働弁護団幹事長の水口洋介弁護士はみる。

08年、日本IBMの社員が退職強要を受けたとして同社を訴えた事件で、東京地裁は昨年末、原告全面敗訴の判決を出した(東京高裁も控訴棄却)。判決では退職を拒否されても勧奨を中断する必要はなく、再検討を求め翻意を促すことも許されるとされたためだ。

こうした退職勧奨の嵐を乗り越えても、次に待ち受けるのが望まない配置転換だ。配置転換も企業側に広範な裁量があるとされる。

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