解雇は当たり前、ニッポン雇用の修羅場 “美談”は遠い昔の話
日本IBMの社内システム関連部門で働いていた松木東彦氏(40)のキャリアは、突然断ち切られた。今年9月18日の夕方5時ジャスト。上司にミーティングだと会議室に呼ばれると、面識のない人事担当者が入室し、名乗る間もなく、一方的に書面を読み上げられた。「早口でよく聞き取れなかった」(松木氏)が、それは解雇予告通知だった。
9月26日付けでの解雇だが、明日以降は出社禁止。この日も午後5時36分までに退社するよう命じられた。書面を渡された後、人事担当者の監視の中、短時間で私物もろくに整理できないまま、追い立てられるように退社した。
退職勧奨や配置転換もなく締め出し
渡された解雇予告通知には、2日内に自己都合退職をすれば解雇は撤回し、割増退職金や再就職支援会社のサポートを提供するとの「ただし書き」がついていた。希望退職を募るどころか、退職勧奨や配置転換の手間すら飛ばし、即座に職場から締め出す新手の技だ。
男性が加盟する労働組合、JMIUの三木陵一書記長は、「IBMにいる10人以上の組合員が解雇されたが、解雇理由はすべて能力不足の一言で具体的な説明すらない」と語る。これではひとたびその対象とされたら、社員側は身を守るすべがない。実際、解雇通告されたショックで、多くの社員が自己都合退職に追い込まれたという(日本IBMは取材に対してノーコメント)。
「今回の日本IBMのロックアウト型普通解雇で、日本のリストラは第4期に突入した」と、リストラ事情に詳しい、キャリアコンサルタントの砂山コウ三郎氏は語る。第1期は特定の中高年を狙い撃ちにしたもので、第2期は業績悪化に伴う全従業員を対象とした希望退職。第3期は整理解雇をちらつかせて希望退職を促すJAL型、そして今回の日本IBM型を筆頭とする強攻策が第4期という訳だ。
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